EVと軽自動車の親和性が高い
サクラとeKクロスEVの販売が好調な理由は2つある。ひとつは電気自動車と軽自動車規格の親和性が高いことだ。軽自動車は街なかの移動手段で、充電設備を設置できる一戸建ての世帯では、セカンドカーとして使われることも多い。
そうなると遠方への外出にはファーストカーを利用するから、セカンドカーの軽自動車では、長い距離を走らない。従って電気自動車に指摘される「1回の充電で走行できる距離が短い」という欠点も問われない。
ちなみに電気自動車で長距離を充電回数を抑えて走るには、大容量の駆動用電池が必要で、価格も高まる。車両重量も増えるから、モーターのパワーアップも求められる。そうなると電力消費量が増えるから、さらに大きな駆動用電池を積まねばならない。拡大の悪循環に陥ってしまう。
その点で軽自動車なら、街なかの移動のために午前中に外出して、帰宅したら充電する。午後に再び外出して、戻ったら充電する、という使い方が可能だ。この用途なら、駆動用電池の容量が20kWhで、1回の充電によって走行できる距離が180km(WLTCモード)でも問題はない。電気自動車の欠点を回避できることが、サクラとeKクロスEVの販売が好調な1つ目の理由だ。
2つ目の理由は価格設定だ。2020年12月22日にリーフと併せてサクラの値上げが発表されたが、それ以前は中級グレードのサクラXが239万9100円で販売されていた。経済産業省による補助金交付額は55万円だから、これを差し引いた実質価格は約185万円に下がる。ルークスハイウェイスターGターボなどの価格に近い。
東京都では別途45万円の補助金も受けられたから、さらに100万円安くなった。実質価格は約140万円だから、デイズに標準ボディを組み合わせたXと同等だ。
見方を変えると、補助金交付額の設定が乱暴だ。サクラXの価格は239万9100円だから、経済産業省の補助金交付額が55万円なら、価格の23%に相当する。アリアB6の価格は539万円で、補助金交付額は85万円だから、16%に留まる。サクラは補助金比率が格段に大きく、買い得度も強まった。東京都などの自治体が交付する補助金にも同様のことが当てはまり、サクラやeKクロスEVの売れ行きを押し上げた。
つまりサクラやeKクロスEVの販売では、補助金に対する依存度が大きい。電気自動車と軽自動車の親和性が高いのは確かだが、補助金は普及が進むに従って減額されるから、サクラやeKクロスEVの売れ行きが安定したものとはいえない。価格設定を含めて、補助金が減額されても好調な売れ行きを保てる商品力が必要だ。