モータースポーツヒストリーと希少性でその価値はうなぎのぼり
もうひとつの改良点としてあげられていた軽量化と重量配分に関しても、アウディは徹底的な見直しを図っている。ラジエターやファンなどの重量物はリヤへとレイアウトが移動され、大きく張り出したリヤフェンダーからはフレッシュなエアを十分に採り入れることも、そして同時にさらなるダウンフォースを得ることも可能になった。
参考までにこのスポーツクワトロのホイールベースは、それまでのクワトロより320mmも短く、その代償として後席は取り外されている。
ボディパネルはケブラーなどの軽量素材を多用し、左右のドアは当時のアウディ80のものを流用。結果、スポーツクワトロはアウディの狙いどおり、軽量化と重量配分の最適化、そして剛性と操縦性の向上を果たしたのだ。
1983年から1984年までに生産されたスポーツクワトロの台数は214台。今回、RMサザビーズのロンドン・オークションに出品されたのは改良型の「E2」で、正確にはインゴルシュタットのアウディ本社では、「RE10」の社内型式が与えられたモデルである。
デビュー戦は1985年のRACラリー。結果はリタイヤだったが、その後さまざまなテストに使用されたあと、アウディのカスタマーに売却され、2012年にはフルレストアを受けたあと、グランツーリスモ・コレクションに所蔵されることになった。
先日のロンドン・オークションでの売却額は180万5000ポンド(邦貨換算約3億円))。そのヒストリーと現存するものはわずかに15台とされる希少性を考えれば、それはある意味妥当な落札価格といえるのかもしれない。