ガソリンスタンド過疎地域の救世主! 2022-2023日本カー・オブ・ザ・イヤーで10点を入れたクルマとその理由【中谷明彦編】 (2/2ページ)

軽自動車ユーザーの多くの生活環境にマッチしている

 国内の自動車販売台数、登録台数を見返せば軽自動車がほとんどの地域において大勢を占めていることがわかる。郊外地域においては一家に1台ではなく一人1台の時代と言われて久しいが、実際に軽自動車なくして地方の生活は成り立たないだろう。通学から通勤、送迎に日常の買い物、通院など軽自動車で移動する機会は圧倒的に多い。

 一方で、地方ではガソリンスタンド(GS)の減少が課題として沸き起こっている。ガソリンスタンドのタンクに関する法改正が行われ、古いタンクを使用しているGSはタンクの入れ替えか廃業の選択を迫られ、多くのGSが廃業を選んでいる。そのため給油するために山を超え数十キロ走って帰ってこなければならないような山岳地域のユーザーも多い。そうした地域にはもちろん電気自動車のための急速充電器インフラなども整備されていない。

 だが、電気の通っていない家庭はない。サクラ/eKクロスEVの美点は、どこの家庭にも通っている電源コンセントを利用して普通充電で一晩で充電することができることなのだ。毎日の走行に必要十分な充電が家庭でできることはメリットとして大きい。市街地の集合住宅など自宅で充電できない地域より地方の戸建て住宅によりマッチしている。それは現状の軽自動車ユーザーの多くの生活環境にマッチしていると言っても過言ではないのだ。結果としてガソリンエンジン車よりも利便性に勝ることが大きなポイントとなった。

 また軽自動車をBEV化したことで、動力性能や静粛性、安全性面で革新的進化を果たす事ができた。従来の軽自動車は遮音性能が劣りやかましい。小さな排気量ではトルクが小さく、エンジンを高回転に回して走る。そのため室内はノイジーで快適ではなかった。それがBEV化されたことで非常に大きなトルクを0回転から獲得し、動力性能もドライバビリティを格段に向上した。さらに静粛性は高級車以上で、音もなく力強く加速する様はガソリンエンジンの軽自動車ユーザーにとって大きな驚きと感動を与えたに違いない。

 こうしたことから、サクラ/eKクロスEVに最高点を配し、ベスト軽カーとして推挙したのである。

 サクラ/eKクロスEVが地方の生活に欠かせない重要な交通インフラを支える頼もしい存在になると確信している。


中谷明彦 NAKAYA AKIHIKO

レーシングドライバー/2024-2025日本カー・オブ・ザ・イヤー選考委員

中谷明彦
愛車
マツダCX-5 AWD
趣味
海外巡り
好きな有名人
クリント・イーストウッド、ニキ・ラウダ

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