【試乗】第二のテスラになり得る実力! 1000馬力超えセダン「ルシード・エア」が想像以上の完成度だった (2/2ページ)

スムースな走りは新興勢力らしからぬものだった

 さらに驚かされたのは、こちらも美しく仕上げられたインテリアのフィニッシュだった。キャビンの居住空間も広く得られており、さらにフレームの部分を残して全面的にグラスルーフを採用しているため、室内の開放感はこれ以上ないほどに大きい。

 後席のまわりのスペースも十分にリラックスした姿勢で長距離のクルージングを楽しめるレベル。キャビンに使用される素材の高級感も非常に高い。

 車両のさまざまなセッティングは、そのほとんどをセンターコンソールに備えられるディスプレイで行うことができる。走行モードは「スムース」、「シフト」、「スプリント」の3タイプ。まずはスムースモードを選択して、そのドライブをスタートすることにした。

 ルシードはすでに、このパフォーマンスのベースグレードとなる「グランドツーリング」のセールスを開始しているが、両車のもっとも大きな違いはモーターの出力。ベースモデルのグランドツーリングでも最高出力は819馬力にも達するから、車重が2000kgを大きく超える(試乗車のパフォーマンスの場合は2268kgと発表されている)重量級のサルーンでも、運動性能は十分にそれが期待できることは間違いない。

 試乗車のパフォーマンスモデルのアクセルペダルを踏み込みと、スムースモードではじつに自然な加速のフィーリングを味わうことができた。あえてアクセルペダルをラフにオン・オフしてみても、BEVにありがちなぎくしゃくした動きは巧みに制御されているし、21インチ径のタイヤを装着しているにもかかわらず、ノイズや振動の処理も十分に納得できるレベルにあった。

 前で触れたローリンソン氏がテスラからこのルシードに移籍してきたことなど、新興勢力にとっては力強いスタッフが加わるとともに、そのノウハウが持ち込まれた意味はやはり大きい。

 走行モードをシフト、そしてスプリントへとチェンジしていくと、エア・グランドツーリング・パフォーマンスの走りはさらにスポーティなものになる。フロントにダブルウイッシュボーン、リヤにマルチリンク式サスペンションを装備し、さらにアジャスタブル方式のダンパーを組み合わせたサスペンションは、スプリントモードではスポーツカー並みの硬さとステアリングの重さを伝えてくるが、それによる正確で安定したコーナリングは大きな魅力だ。

 洗練されたスタイリングと高級感、そして卓越した走りと実用性。そのすべてが実現されたルシード・エア。今後追加設定されてくるモデルを含め、それはBEV市場で大きな話題を呼ぶことは確かだろう。日本への上陸も、もちろん大いに期待したいところだ。


山崎元裕 YAMAZAKI MOTOHIRO

AJAJ(日本自動車ジャーナリスト協会)会員 /WCOTY(世界カーオブザイヤー)選考委員/ボッシュ・CDR(クラッシュ・データー・リトリーバル)

愛車
フォルクスワーゲン・ポロ
趣味
突然思いついて出かける「乗り鉄」
好きな有名人
蛯原友里

新着情報