想像以上に自由なコンセプト!
ふたつの要素を組み合わせた新しい顔
こうして変遷を続ける三菱の「顔」ですが、2014年に日産から三菱に移った國本恒博氏がデザイン本部長に就任すると、そこでまったく新しく打ち出されたのが件のダイナミックシールドです。
「形状は機能に従う」という発想により、先述のランエボなどのグリルから「性能を表すカタチ」を、「パジェロ」のプロテクションバンパーなどから「ヒト、クルマを守るカタチ」を抽出、2015年のジュネーブショーに出品の「Concept XR-PHEV Ⅱ」で、このふたつの要素を組み合わせた「顔」が初披露されたのです。
具体的な表現としては上下に分けたランプが特徴で、上部は歩行者の視認性を意識したデイタイムランニングランプ、下部は眩惑を防止するヘッドライトという構成。このランプ間を金属的なシールド表現でつなぎ、強靱なプロテクト感を生み出します。
非常にわかりやすい構造ですが、じつはそれをどう見せるかの細かい規定はなく、思っている以上に自由度のあるコンセプトと言えそうです。たとえばダイナミックシールドを100%反映したという「アウトランダーPHEV」と、デリカD:5の表現では相応に異なるのが好例です。
変化と成長を織り込んだデザイン
そこでデリカミニです。あらためて顔を見れば、先述の上下2段構成すらなく、上部にはふつうにヘッドライトが置かれていて、ベースのeKクロスとは大きく異なっています。加えて、メッキパーツが前提だと思われていたシールドはブラック素材に変化、形状は初期デリカD:5のバンパーガードに準じて短かいものに。
ところが、それでも一見してダイナミックシールドに見えるところが肝と言えるでしょう。そうした変化球もあり得ることをデリカミニは上手く表現しており、結果、デリカD:5の顔はむしろeKクロスに似ているということになったワケです。
いやいや、そんないい加減なデザイン言語はあり得ないと考えるか、あまり同じ顔ばかりじゃツマラナイと考えるか、そこは意見が分かれるところでしょう。いずれにしても、この自由度の高さによって、今度こそ三菱の顔として定着することを期待したいところです。