この記事をまとめると
■新時代のモビリティとして期待されている超小型EVだが、その前途は多難だ
■電動キックボードは身近なパーソナルモビリティとして普及し始めている
■将来的には大型EVはシェアリングされ、超小型モビリティは所有が進むと予想される
CASE時代に必須の乗り物となるパーソナルモビリティ
これまで乗用車というのは日々の買い物から週末のレジャー、そしてお盆や年末年始の帰省までをカバーするものとして捉えられてきた。そのため、どこにプライオリティを置くかで結論は変わるにせよ、ある程度はオールマイティなパッケージや機能がマイカーには求められがちだった。
しかし、CASE時代にそうしたクルマ選びの基準は、まさしく時代遅れの考え方となる。
あらためて整理すれば、100年に一度の自動車変革期を象徴するCASEというキーワードは、コネクテッド・オートノマス(自動運転)・シェアリング・エレクトリック(電動化)の頭文字をつないだもので、これからのクルマづくりにおいて基本となるアプローチを示しているともいえる。逆にいえば、スタンドアロンで人間が運転する個人所有を前提としたエンジン車は時代遅れとなってしまう、というわけだ。
こうした時代において、注目を集めているのがパーソナルモビリティと呼ばれるカテゴリーである。
バッテリーEVを前提とした電動化時代において、短距離ユースと長距離ユースの両方をカバーするオールマイティなクルマづくりは非常に難しい。移動距離的な意味で対応力を高めようとすれば、自ずとバッテリー搭載量が増えてしまい、高価で大きなクルマになってしまう。
大は小を兼ねるという発想ではなく、適材適所でさまざまな電動車両を使い分けるというのがCASE時代のモビリティの利用法といえる。そして、適材適所的にモビリティをシームレスに利用しようと思うと、コネクテッドやシェアリングといった要素が欠かせないという面も出てくる。その意味でも、CASEというのはすべてが繋がっているキーワードでもあるのだ。
実際、日本においても新時代のパーソナルモビリティについての整備は着々と進んでいる。
近距離ユース専用EVといえるのが、道路運送車両法でいうところの「超小型モビリティ」だ。
ナンバープレートは暫定的に軽自動車と共通で、自賠責保険や税金についても軽自動車に倣っているが、法定速度60km/h以下となっているため高速道路や自動車専用道の走行はできない街乗りスペシャルのモビリティだ。乗車定員は1〜2名を想定している点でも新時代のパーソナルモビリティとして考えられた規格といえる。
このカテゴリーのモデルとしては、トヨタC+Podがすでに街中をスイスイと走りまわっている。現時点ではリース専用車ということもあって、一部の法人が営業車として採用しているくらいでしか見かけないのも事実だが……。
トヨタC+Podが一般ユーザーに普及しづらいというのは、リース専用という売り方もそうだが、やはりコストパフォーマンスの部分だろう。その価格はエントリーグレードでも165万円。一充電航続距離150kmという性能、歩行者や自転車まで検知する衝突被害軽減ブレーキを備えるといった安全性を考えればリーズナブルといえるが、パーソナルモビリティとして積極的に選ぶには高価なのは否めない。
一般家庭がセカンドカーとしてC+Podのような超小型モビリティを利用するようになるには、少なくとも軽自動車よりも安価な価格帯となることが必要だ。とはいえ、バッテリーのコストが大幅に下がらない限り、そして100km以上の航続距離を求める限り、超小型モビリティの価格は最低でも150万円前後となってしまうだろう。ユーザーが、実際の利用シーンに即した航続距離でいいと割り切れるようになるまでは超小型モビリティの普及は考えづらい。
もっとも、超小型モビリティを一般ユーザーが使うようになる時代では所有という考え方は少数派になり、近距離移動はシェアリングを利用するというスタイルが主流となっているだろう。超小型モビリティが売れる未来というのは予想しづらいが、超小型モビリティを多くの人が利用している未来というのはやって来る可能性が高そうだ。