レンタルで普及中の電動キックボードも将来的には所有となる?
その意味では、ひと足早くシェアリングによって普及期を迎えそうなのが、電動キックボードと呼ばれる、もっとも小さなパーソナルモビリティだ。
現時点では電動キックボードを公道で乗ろうとすると原動機付自転車となってしまうので、ブレーキ、ヘッドライト、ウインカーなどの保安部品が必要で、運転するにもヘルメットの着用が義務となる。しかし、すでに一部の実証実験エリアではヘルメットなしでの運用が可能になっている場所もある。
そして、電動キックボードのために「特定小型原動機付自転車」という新区分が生み出されている。法律としては施行されていないため、まだ電動キックボードにノーヘルで乗るのは違法となるが、将来的には、16歳以上であれば免許不要、ノーヘルで電動キックボード(特定小型原動機付自転車)に乗ることができるようになることは確定している。さらに、特定小型原動機付自転車については、速度リミッターを作動させることで一部の歩道を通行することも可能になるという。
ユーザー的にいえば、現在の自転車と似たような感覚で利用できるのが「特定小型原動機付自転車」施行後の電動キックボードということになる。新しいモビリティの普及期には、さまざまな問題が起きてくることも容易に想像できるため反対意見も生まれているが、特定小型原動機付自転車というカテゴリーの誕生は日本の社会がCASE時代に対応するために不可欠の判断だったといえるだろう。
とまあ、ここまでは一般的な予測されている超小型モビリティ普及へのシナリオだが、筆者個人の経験を踏まえていえば、超小型モビリティはシェアリングではなく所有され、長距離移動や多人数乗車に向いた大型EVこそシェアリングやレンタルで利用する未来がやって来ると予想している。
なぜなら、近距離移動というのは日常的に利用するわけで、買い物や送迎のたびにシェアリングカーを予約して、置き場所まで取りに行くというのは手間がかかるからだ。さらにいえば、使いたいときに借りられないのはストレスとなる。子どもが熱を出して病院につれて行きたいのにシェアリングがすべて出払っていたなんてことがあれば、ストレスという話ではすまないこともあるだろう。
一方、レジャーや帰省といった用途は、予定が見えるため事前に予約しておくことが可能(繁忙期には難しいこともあるだろうが)。結果として日々使うパーソナルモビリティこそ所有という方向に、実際は向かうのではないだろうか。
CASEの要素である自動運転テクノロジーが発達して、無人走行が可能になれば、個人の移動は基本的にロボットタクシーが担うようになり、移動距離や利用人数にあわせて最適なクルマが迎えに来るという未来も考えられないではないが、それにはまだまだ時間がかかりそうだ。