シビックタイプRの乗り味を変える実効空力デバイス
では、いよいとシビックタイプRで試す。こちらも最初にノーマル状態で走行。サーキット走行テストではタイプRのハイパフォーマンスぶりを何度も確認しているが、路面の荒れたワインディンではいささか足が硬いと感じる傾向にあった。コンフォートモードを選択していれば適度な硬さで快適性は確保されているが、それでも路面の段差乗り越え時にはハーシュが強く伝わる。ブレーキングからのコーナー旋回時にはリヤが荷重不足になり接地性が失われる不安定領域も確かにあった。
そして今回の目玉アイテムであるホンダアクセスが手がけたドライカーボン製の「テールゲートスポイラー」に付け替えて走行してみる。
このスポイラーはノーマルより1kgほど軽量に出来ていて、翼断面積は大きく取られ、翼後端中央部は上方へガーニーフラップ状に跳ね上げられている。見た目がカッコいいだけでなく、実質的なダウンフォースも大幅に増していることは一目瞭然だ。それが一般道の速度域で如何に作用するのかに注目して走り出す。
ちなみにステーはノーマルのものを使用し、スポイラー本体のみを交換するタイプだ。本来は販売店で交換するのだが、今回は特別に有資格者による装着でその場で交換して乗り比べた。
すると、やはりタイヤの転動がスムースに感じられ、ステアリングを通じて路面インフォメーションを感じ易くなっている。さらにタイヤのユニフォミティ変化が小さく、真円度の高いタイヤを履いたかのような感触を得た。
それはサーキットで試した「ミシュラン・カップタイヤ」の履き初めに似た印象となったのだ。思わず「タイヤ替えたのかな?」と同乗する土屋氏に問いかけてしまったが、氏も「だろ!」と頷いている。
路面段差通過ではゴツゴツしたフィールが丸くなり、タイヤのエンベロープが増した印象。タイヤ接地面が段差を緩やかに覆い、面圧を下げてハーシュを低減している様子が感じ取れたのだ。
また、車内騒音も低下し、スポーツカーのはずのタイプRが、まるで質感の高いツーリングカーのような乗り味となった。もちろんシェブロン形状の実効空力デバイス搭載だけでなく、スポイラー本体の形状にもあらゆる空力的な工夫がなされているが、N-BOXに装着して体感した空力効果がタイプRの常用速度域でも効果が感じられ、大したものだとあらためて納得させられたのだ。
タイプRのテールゲートスポイラーに組み入れられたシェブロンは翼底面に隠されるように造形されていた。その場所やシェブロンの配置などは何度も走行テストを重ね最適な位置を探り当てたという。
高価なカーボン製スポイラーだが、サーキット走行時だけでなく、一般道の通常使用時にも効果が得られ、ルックスも本格的でかっこよくなるなら大いに価値があるというものだ。
まるで魔法でもかけられたかのように乗り味に変化をもたらした実効空力デパイス。福田氏によれば装着部位や大きさにより、さまざまなモデルに大きな効果を期待できるという。
この効力を知ってしまったら、自分でも試したくなるもの。「すでに自作でコピーしたようなシェブロンを製作してチャレンジしている強者ユーザーもいるみたいです!」とホンダアクセスのスタッフは胸を張った。僕も我が家のN-BOXでも実効空力デバイスを装着して実験してみることにした。