3代目プリウスは「目標販売台数」を宣伝に活用
そこで「販売計画台数」といった表現が使われる。「計画」でも達成できないことに変わりはないが、「計画変更」で台数が下がったという見方も成り立つ。
また「目標販売台数」を公表しない日産では、以下の話が聞かれた。「最近は納期が遅れて、登録できないことも多い。これでは目標販売台数を設定する意味も薄れる。そこで社内的には台数の設定はあるが、外部には公表していない」。
「目標販売台数」の使い方として、受注台数を誇る目安にすることもある。これを大々的な宣伝に活用した最初の車種は、2009年発売された3代目トヨタ・プリウスだった。
2009年2月にホンダからインサイトが低価格で発売され、プリウスは急遽、価格を割安に抑えた。また2代目の販売店はトヨタ店とトヨペット店だったが、3代目ではカローラ店とネッツ店を加えて全店扱いとした。そして発売日は2009年5月18日だったが、販売店では4月1日から予約受注を積極的に行った。
その結果、3代目プリウスは「月販目標台数:1万台」としていたが、6月に入ると「受注台数が18万台/月販目標の18か月分」と公表された。この影響で納期は最長10か月まで延びて、ユーザーは迷惑したが、「プリウスの人気は凄い」と評判になった。
問題はこの後で、予約受注を行うのが当たり前になった。発売の数カ月前から予約受注を行って注文を溜めておき、発売されたら「発売後1カ月の受注台数が10万台」という具合に宣伝する。予約受注の期間も含めると、本当は1カ月ではないが、そこは黙って人気車であることを誇示する。
そして予約受注を早期に開始すると、その車種の売れ行きや人気のグレードも早い段階で分かる。生産計画を立てやすく、生産開始と同時に納車できてメーカーには都合が良い。
その代わり販売店では、実車のない状態で商談するから、ユーザーと販売スタッフを困惑させる。納得して安全な買い方をするために、予約受注に応じないで試乗してから契約すると、納期が遅れてしまう。「月販目標台数」に罪はないが、その利用の仕方により、クルマの販売現場を混乱させる結果を招いた。