本家が劇中車をリメイクしたらそれはもはやホンモノ
そして1963年にDB4の後継車として登場したのが、ここでの主題であるDB5だ。
後継車といっても、ボディデザインはDB4とほとんど変わらず、外観から両車を識別することは不可能に近い。フィラーキャップが左右のリヤフェンダー両方にあるのがDB5の特徴だろうか。
エンジンは排気量が3995ccへと拡大され、最高出力も282馬力に引き上げられた。翌1964年にはさらに314馬力へとチューニングを強化したヴァンテージ仕様もオプションで設定され、標準のミッションも前後してデビッド・ブラウン製4速MTからZF製の5速MTに変わっている。
車重はパワーウインドウや油圧ジャッキなどを装備したこともあり、DB4の最終モデルと比較して116kg増となる1470kgに。
それでも運動性能は最高速で228km/h以上を記録することに成功したという。最終的なDB5の生産台数は、オープンのドロップヘッドクーペや、シューティングブレークに改造されたものも含め1023台だった。
DB5のリメイクモデルに話を戻そう。アストンマーティンはそれ以前にも、2017年にDB4GTのリメイクモデルを製作し、それは世界の熱狂的なアストンマーティン・マニアに好評を博した。
それに続くDB5では、ゴールドフィンガーがテーマであったことは前で触れたとおりだが、アストマーティンはそのために、製作に使用される素材やパーツなどを、当時の製作で使用されていたものにこだわっている。
ZFは5速MTを提供し、インテリアで使用されるレザーはコノリーから。アルミニウム製のボディパネルはもちろんハンドメイドでスチール製シャシーに取り付けられた。
そしてアストンマーティンとジェームスボンド映画のプロデューザーであるEOMプロダクションは、わずか25台のそれを、2020年7月から275万ポンドで販売することを発表したのだった。それはアストンマーティン、そして007シリーズというブランドが持つ伝統とステータスが融合した結果の作だったと評してもよいだろう。