この記事をまとめると
■EVはガソリン車と比べて重い
■理由はリチウムイオンバッテリーの搭載
■しかしEVにおいて重いことはデメリットではない
EVは軽自動車であっても上質な乗り味を実現できる
電気自動車(EV)の車両重量が重くなるのは、大容量のリチウムイオンバッテリーを車載するためだ。
同じ車格で比較しやすい日産デイズとサクラを比べると、デイズのガソリンターボ車が940kgであるのに対し、サクラは1080kgある。その差は150kgだ。メルセデス・ベンツのSクラスとEQSを比べても、500kgほどEVのほうが重い。それら重量増のほとんどがリチウムイオンバッテリーの重さといえる。
クルマの性能は、軽量・小型であるほど望ましいと言われ続けてきた。しかし、EVでは、重量に関してその法則にあてはまらない。
そして重いことで利点が生まれている。元来、高級車は大柄で重量が重いことによって、優雅な乗り心地を実現してきた。したがってEVの場合、たとえ軽自動車であっても上質な乗り味を実現できる。なおかつ騒音が少ないので、静粛性は格段の違いだ。小さな高級車という評価がまさに当てはまる。
そもそも高級車は、静粛性や滑らかな走りをエンジン車で追求してきた。自動車メーカーにとって、EVになることは、あらゆる性能を苦もなく実現できることにつながる。
一方、車両重量が重くなれば、加速などでの動力性能に不足が生じたり、大排気量化や過給など追加の技術を加えたりしなければ、エンジン車では車両の重量増分を取り返せなかった。しかしEVであれば、モーターが低い回転で高いトルクを出せる特性なので、これも苦もなく達成できる。このことから、EVの運転では、発進でアクセルペダルをエンジン車のように強く踏みすぎると電力の無駄になってしまう。車両重量が重くても、軽くアクセルペダルを踏むだけで、滑らかかつ十分な発進加速を得られるのがEVだ。
エンジン車では懸念された重いということが、必ずしも負の要因とならないのがEVなのである。それでも、BMWがi3で試みたように、車両重量を軽くするためカーボンファイバーを車体骨格構造に用いたことは、無駄ではない。重いバッテリーを積みながら、それ以外の車体側で軽量化できれば、充電された電力の無駄遣いをしなくて済む。
ほかに、重いバッテリーは床下に、平らに敷き詰めるように車載されるため、低重心となり、前後重量配分も均等に近づけることができる。これまで、BMWが苦心してこだわり続けてきた50:50の前後重量配分は、EVになればどのクルマもそれに近づけられる。
バッテリーを積むことで重くなるのに、重さを感じさせないEVは、クルマの走りに新たな価値をあたえることになる。