モーター走行による静粛性の高さと乗り心地のよさはPHEVの美点
今回、HVのハリアーも同時に試乗し、HVならではの静粛性の高さと、ハリアーとしての上質な仕上がりを改めて実感した。それでも、PHEVでのモーター走行の感触は、それ以上の上級さがある。リチウムイオンバッテリーを余分に車載するため、PHEVの車両重量はHVに比べ260kgほど重くなる。それによって走りに重厚さが増し、単に静粛性がより優れるだけでなく、落ち着きある高級さを体感できるのだ。
では、260kgも重くなった分、加速性能が落ちていないのかという懸念に対しては、4輪駆動となるE-Fourとしての後輪側モーター性能はHVと同じだが、前輪側モーターの出力が1.5倍の134kW、最大トルクは1.3倍の270Nmへ性能向上されているため、まったく不足はない。また、モーターは、最大トルクがアクセル踏みはじめからすぐ立ち上がるので、動き出しのよさや、加速の鋭さも体感できる。
ハイブリッド走行での燃費で、車両重量が重くなるぶん、HVに比べPHEVはWLTC燃費の数値で若干劣るが、動力性能や乗り心地などの面で、PHEVを選ぶ意味は十分にあるだろう。
ただし、ひとつ条件がある。それは、自宅で200Vでの普通充電ができることだ。RAV4 PHVも同様だが、ハリアーPHEVは普通充電口しか設定されていない。したがって、CHAdeMOの急速充電器での充電はできないのである。
EVの普及に際しても問題となっているように、日本ではマンションなど集合住宅や月決め駐車場で200Vの充電がほぼできない状況にある。集合住宅では、管理組合の合意が得られないのが大半の理由だ。月極駐車場では、まだ土地の所有者や不動産業者などに電動化への理解が進んでいないためである。
したがって、200Vのコンセントで充電できない住環境では、ハリアーPHEVを購入しても、単なるHVとして乗るしかなくなる。クルマにはチャージモードが設定され、走行しながら充電することはできるが、それを繰り返していては何のためのPHEVかわかりにくくなる。
100Vのコンセントからの充電もできなくはない。だが、自宅で使う電気使用量の契約容量を超える状態になると、ブレーカーが落ちて停電してしまう可能性がでる。自宅で普通充電するに際して、200Vのコンセント設置を推奨するのは、暮らしに不自由しないでEVやPHEVに充電できる環境を整える意味がある。
EVのみならず、PHEVの普及に際して、集合住宅や月極駐車場で200Vの普通充電ができるようになることが、日本の喫緊の課題なのだ。