「買ったクルマすらこないのになんで新車を出すんだ」の市場の声! 深刻な納期遅延下でもメーカーが新型車を発表するワケ (2/2ページ)

簡単には予定を変更できない事情も

 販売店からは次のような話も聞かれた。「通常であれば、売れ行きを増やすためにも、フルモデルチェンジや改良が必要だ。しかし今は納期が遅れてお客様を待たせている。このタイミングでモデルチェンジを行うと、受注を止める期間がさらに長引くから、納期がますます遅れてしまう。今はモデルチェンジを抑えて、とにかく可能な限り生産を優先させ、納車できる台数を増やして欲しい」。

 確かに今は、納期の遅延を食い止めることが大切だ。仮に納期を遅らせて改良を実施しても、通常とは違って販売台数を大幅に増やすのは難しい。納車を待つユーザーに配慮して、CM放映などの宣伝も控えるから、売れ行きはさらに増やしにくくなる。

 それでも実際にはモデルチェンジが行われる。一番の理由は商品力の進化だ。今のクルマでは、安全性、運転支援機能、環境性能の向上が著しい。この分野では競争も行われているから、モデルチェンジを実施しないと、ライバル車から遅れて販売にも悪影響を与えてしまう。

 法規や規制への対応もある。改良を実施しないと、売れ行きが下がるだけでなく、生産や販売が不可能になる場合もある。

 そして軽自動車や一部の小型/普通車を除くと、今は大半の日本車が海外でも販売される。海外市場の都合に基づいて、改良を受ける場合もある。以上のような事情に基づいて、クルマの開発は複雑に行われている。商品計画として綿密な予定が組まれているから、簡単には変えられない事情もある。


渡辺陽一郎 WATANABE YOICHIRO

カーライフ・ジャーナリスト/2024-2025日本カー・オブ・ザ・イヤー選考委員

愛車
フォルクスワーゲン・ポロ(2010年式)
趣味
13歳まで住んでいた関内駅近くの4階建てアパートでロケが行われた映画を集めること(夜霧よ今夜も有難う、霧笛が俺を呼んでいるなど)
好きな有名人
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