この記事をまとめると
■ランサーエボリューションの開発ドライバーが歴代モデルを振り返る
■ワゴンモデルがセダンよりも高いパフォーマンスを誇っていた世代もある
■ラリー以外にもスーパー耐久で大活躍し、名実ともにハイパフォーマンスモデルだった
開発ドライバーが歴代ランエボの思い出を振り返る
1992年に登場した三菱自動車の俊足セダン「ランサー・エボリューション(通称・エボ)」。2022年はその生誕30周年にあたる記念すべき年だった。残念ながら2015年のエボXファイナルエディションを最期に三菱はエボの開発・生産から撤退してしまった。そこで、この30年を振り返り歴代エボの傑作度ランキングを語っておきたい。
僕自身のエボとの関わりはエボVから。エボ1〜Ⅳは4輪駆動+2リッター直4ターボエンジンのパッケージングで、国内外のオフロードラリーやダートラなどのモータースポーツシーンで大活躍していた。とくにWRC(世界ラリー選手権)ではトミー・マキネン選手を擁し、ドライバーズタイトルやマニュファクチャラータイトルを獲得。全世界に実力を示していたのだ。しかし、WRCではターマック(舗装路)のイベントが増え、オンロードでの走行性能をより高めることを求められる。さらに国内でもグループN規定によるN1耐久レースシリーズなどサーキットでの速さを強化する必要に迫られていたのだ。
そこでエボⅤの開発にあたり、ざまざまなコンサルテーションを行い、エボのサーキット性能を高める作業にかかわることとなったわけだ。
長年のレース経験と知識を活かし、さまざまな提案を行った。その第1弾として登場したエボVはサーキットで圧倒的な走行性能を示し、「ゼロカウンター走法」を生み出し、その速さは現代にも語り継がれている。このエボVにはレース仕様のベースモデルとなるRSグレードが設定され、それが傑作度ナンバー1の仕上りだったといまでも認識している。
ボディパネル部材やウィンドウを薄板化して軽量化。アルミのフェンダーやボンネットを採用し、オーバーフェンダーにしてトレッドを拡幅。ブレンボのブレーキシステムに倒立式ショックアブソーバーを採用。前後デフにLSDを装着するなど速さに特化したモデルとなっていた。
トランスミッションはマニュアル5速仕様だが、ギヤ比を徹底的にクロスレシオ化し戦闘力を高め、ファイナル比を2タイプ用意してステージ別に適合性を確保していた。
一方、乗用グレードのGSRにはAYC(アクティブヨーコントロールデファレンシャル)を搭載。ステージによってはRSを凌ぐ速さを示して電子制御装置の可能性を示したのだ。このGSRはセカンドベストの傑作車と言っていいだろう。