いまも昔も人気モデルは盗難対象になりやすい
「当時、AMGのC36は人気車で、納車に1年も待たされていました。辛抱できなかった私はディーラーで即納できるC230を手に入れて、ルックスだけでもAMGにしようと思い、200万円ほどかけてドレスアップしたのです」
タケイさんによれば、外装はもちろん内装もレザーシートを張り替え、ブラックアイドメープルのパネルやシフトノブなど「AMGのセールスマンが見てもC36としか思わない仕上がり」だったそう。ですが、このマニアックさが裏目に出ました。「空港の場外パーキングで盗まれました」。
当然、パーキング側の補償などもあったでしょうが、顛末は意外な方向に。
「1週間もたたないうちに、パーキングから『戻ってきました』との連絡がありました。私のC230が、きれいな状態のままパーキングの裏手に置き去りにされていたというのです。パーキング側は不思議そうにしていましたが、犯人は乗ってみたら本物のAMGでないのがわかったのだと思います」
普通の人からしたら「不幸中の幸い」などと受け止めるかもしれませんが、クルマ好きなタケイさんにとっては「不幸も不幸」で、愛車が勝手に他人の手で運転されたのですから煮えくり返る思いだったに違いありません。
「悔しいとか、頭にくるというのを通り過ぎて、しばらくは茫然自失といった状態でした。が、ラッキーなこともあってディーラーのほかに頼んでいた業者からC36の即納車が見つかったという連絡が入り、予定よりも早くAMGに乗れたのです」
奇妙なことに、ここでタケイさんの表情が少しだけ曇ったのです。
「いま思えば、もしかしたらあのC36も盗難車だったのかもしれません。詳しくは言えませんが、やけに安かったし、あとで調べたところ名義変更のタイミングに不自然なところもありましたから」
言葉を濁したものの、タケイさんはなにか確信めいたものがあるようでした。
まったく憎むべき窃盗犯ですが、驚くべきはC36の超絶人気! 同様にランクルも窃盗犯から徹底的に狙われた時期がありましたっけ。
「ああ、兄貴たちのランクルもやられました。犯人たちは捕まったそうですが、クルマは大陸に送られたようで返ってくることはありませんでしたけどね。テロ組織とかに使われてなければいいね、なんて家族で心配しましたよ」
なるほど、盗難車のほとんどは海外に送られるとは聞いていましたが、まさかテロ組織とは! 実際、資金に余裕がある組織はランクルやレクサスに目がないとも。たしかに、自分の愛車が犯罪、とりわけテロ活動に使われているなど、クルマ好きにとっては悪夢以外の何物でもないでしょう。
さて、タケイさんの不運はこれだけにとどまりませんでした。さらなる悲劇はつい最近のこと。
「ずっとクルマにうつつを抜かしていたせいでしょうか、女房に逃げられましてね。出張から帰ったら家の中はもぬけの殻。預金通帳やら金目のものは一切合切なくなっていましたけど、一番つらかったのは買ったばかりの(マセラティ)MC20を持っていかれたこと。なにしろ予約してから2年も待ちましたからね」
たしかに同情を禁じえませんが、どこかしら納得しがたい思いも(笑)とにかく、盗難事件に油断は禁物! くれぐれもお気を付けくださいませ。