ランボルギーニ自慢の電子制御システムが悪路を「掘り返す」
また、トレッドの拡幅はランボご自慢の電子制御システム「LDVI(ランボルギーニ・ディナミカ・ヴェイコロ・インテグラータ)」からのリクエストではないかと考えます。ダイナミック、かつ先読み機能さえ与えられた統合制御システムからすると、十分なグリップが得られない、また先読みしづらい悪路はどうしても物理的な対応を優先したかったのでしょう。つまり、トレッドを前30mm、後34mm広げることで直進性よりも左右バランスの安定化を優先したということ。
これによって、ステラートは起伏の激しい岩場、砂地といった状況でも横転しづらく、より安定したコーナリングが可能となるはずです。
加えて、LDVIがさらに進化していることも容易に想像がつきます。6軸IMUの制御についてランボルギーニ(と同グループのドゥカティ)はかなりのアドバンテージを持っているので、たとえ砂漠や岩場で飛んだり跳ねたりしたとしても、ステラートはその名のとおり地面を「掘り返して」爆進すること明らか。
ちなみに、開発スクープがリークした当時、車高アップは47mmとされていましたが、実車で44mmに抑えられたというのはちょっとした快挙にほかなりません。仮にBSのタイヤによって達成できた数値だとしても、開発陣にとっては朗報であり、またLDVIの開発にとっても大いに有利となったことは言うまでもないでしょう。
ステラートの美徳として忘れがたいのは、ウラカンEVOに対してわずか48kgしか増えていない1470kgという車重です。車高やトレッドのアップには強化部品がつきまとうにも関わらず、最低限の重量増しというのは素晴らしいのひとこと。
そして、EVOやテクニカの640馬力に対し、ステラートは618馬力に抑えられていることも賢明と言わざるを得ません。端的にいって、悪路では最高速よりも中間加速に貢献するトルクのほうがはるかに重要。ここに根差したエンジンマネージメントを敢行した開発陣は、さすが「わかってらっしゃる」と頭が下がる思いです。
いまや800馬力や1000馬力を発揮するクルマもざらになってきましたが、舗装路やたとえサーキットであろうと、おいそれと限界パフォーマンスを試せるものでもないでしょう。そこへいくと、砂漠や悪路といった低ミュー路面であれば、少ないパワーや低いスピードでも簡単にドリフトやパワースライドが楽しめます。そこに気づくリッチマンの数は、1499人よりもいくらか多い程度かと。
ステラートを見れば、なるほどランボルギーニはクルマ作りだけでなく、マーケット戦略もだいぶ進化していると大いに納得させられました。