「RS」の名に恥じないパフォーマンスを発揮
印象的なのは、ステップ感覚である。エンジンが高回転で安定し、速度が後追いするような、感覚とのずれはない。まるで内燃機関と多段ミッションを組み合わせたかのように、速度が高まるのに合わせて、階段を登るように回転がステップするのだ。なにも聞かされなければ、これがハイブリッドだと気づく人は稀だろう。
エンジンサウンドも心地よく唸る。いたずらに鼓膜を刺激するような音質ではまったくないが、ビートの効いたサウンドは躍動的なのだ。
ステアリング裏に組み込まれた左右のパドルは、ギヤを選択するものではない。減速セレクターであり、右側を引くと回生力が弱まり、左側を引けば逆に回生力が強くなる。それによって減速感をチョイスすることが可能だ。ワインディングを軽快なリズムで駆け回るには都合がいい。
操縦性能も躍動的だ。足まわりは締め上げており、無駄なロール感は皆無。外輪にフル荷重を与えようとしても、ボディはそれほどロールしない。やや強引なコーナリングに挑んでも、常にフラットな姿勢をキープするのだ。FF特有の、リヤの内輪を高々に上げたような姿勢にはならない。RSの名に恥じないのだ。
それでいて、ロール軸が前傾したような攻撃的な感覚である。微小舵角からヨーが高まり、大舵角に至ってもキープされる。わずかなハンドルを操作でグイグイとコーナーを突き刺そうとする。まさに、元気なコンパクトハッチを走らせているような感覚に浸れるのである。
それでいて意外だったのは、乗り心地が極端に悪化していないことだ。サスペンション剛性が高いことは明らかだが、路面の突起に突き上げられても、バウンジングが少ない。トンと突き上げられても、スタッと収束する。その点でも姿勢は常にフラットなのだ。
RSという攻撃的なネーミングになっても、日常性も備えている。これなら、日頃の通勤通学でも苦痛はないだろうし、それでいてワインディングを軽快に駆け回る。まさに、1974年にデビューしたシビックRSを彷彿させる1台だ。
伝統は息づいていた。