懐かしの装備も現代版に進化している
いまではタクシー運賃のクレジットカード決済は、その機器を導入する車両も多く、半ば当たり前にもなってきた。さらに交通系ICカードやQRコード決済など、多彩な方法での決済を可能としている事業者もある。
ただし、地方部に多いのだがいまだに現金決済しか受け付けない事業者もある。これは、筆者が聞いた限りではカード決済機を導入し、カード決済による運賃収入については、カード会社へ支払う手数料が乗務員の給料から差し引かれることがあるそうで、これに組合などが同意しないと導入できないといった話も聞いたことがある。もちろん、事業者自体の判断で乗務員負担ではなくとも、事業者自体が手数料を払いたくないとか、地域特性でそこまで機器導入しなくてもよいとの判断もあるようだ。
気をつけたいのだが、決済情報は無線でやりとりするのだが、いまでも、ごく稀に通信障害などでカード決済ができないケースもあるとのこと。
決済操作については、専用端末に差し込むタイプよりも、都市部では助手席ヘッドレスト部に装着された、コマーシャル動画を放映するディスプレイ横にカードをさす場所や、テンキーがあり、その場でPINコード入力もできるようになっている車両が目立っている。
大昔のタクシーで、インパネ近くに大きな時計があったのを覚えている人もいるかもしれない。それは、東京など一部の都市では義務装着となっているタコグラフとなる。
歴史に残るタクシー専用車ともいえる、トヨタ・クラウンコンフォートでは、初期モデルからしばらくは運転席に向かって計器盤左側にタコグラフが収まるスペースが用意されていた。しかし、2013年の一部改良でタコメーター(タコグラフではなくエンジン回転計)が全車標準装備化され、タコグラフスペースが計器盤からなくなった。これはアナログ式からデジタル式へタコグラフが変化してきたことが多い。
アナログ式は、前面の時計部分を開けることができ、そこに丸いチャート紙をセットすることになる。そして、このタコグラフチャート紙に速度、距離、時間の記録が可能となり、これで個々の運行管理を行っていた。タクシーは24時間記録用の用紙を使うので、仮に残業時間をオーバーして24時間乗務し、さらに速度の加減速が激しい(飛ばしすぎ)と、記録データに記録されるグラフのジグザグが激しくなるので、“ひまわりが咲いた”などとも呼ばれていたようだ。
デジタルタコグラフはいままで、タコチャート紙に記録していたものをデジタルデータとして記録するもの。古いものではメモリーカードなどに記録するものもあるが、最新型ではクラウド上に記録するタイプとなり、速度・時間・距離などのほか記録できるデータも多種多様となっている。また、リアルタイムで記録情報を見ることも可能となっており、車内にカメラを設置すれば、車内のリアルタイムな様子を見ることもできる。
日報記録機能あるので、過去には日報が紙ベースのころには、お客を乗せるたびに、“どこから乗せて、どこで降ろした”のかを乗務員が手書きで記録していたが、これも自動で記録されるようになった。過去に自筆記入していたころは、どこで乗せ。どこで降ろしたかをいちいち確認するので、新人乗務員にとっては“道や場所、町名などを覚える”のに効果的でもあったのだが、いまはデジタルタコグラフで自動記録するので、地理に詳しくなるのに時間がかかるケースも目立ってきたなどともいわれている。そのため自発的に自筆で乗務記録を行う乗務員もいると聞いている。
多くの地域では義務装着ではないものの、義務装着対象地域外の事業者でも運行管理ツールとしてデジタルタコグラフを導入する事業者も多くなっているようである。
意外なほど、いまどきのタクシーにはハイテクツールが多く搭載されているのである。