なぜピレリはF1とWRCにタイヤを供給しているのか? モータースポーツシーンにおけるピレリは、サーキットレースの世界最高峰であるF1、ストリート競技の最高峰であるWRCの両方で単独タイヤサプライヤーとして活動しています。毎レースごとに進化する車両に合わせてタイヤを進化させ、あるいは安定した性能のタイヤを供給することの労力は生半可な苦労ではないでしょう。にもかかわらず、なぜピレリはモータースポーツのトップカテゴリーにタイヤを供給し続けているのでしょうか。
2022年のラリー車両の特徴は、rally1にハイブリッドユニットが導入されたことです。このほかアクティブセンターデフの禁止なども行われていますが、これらはACTIVEセンターデフがOKだったときと比べると曲がりにくいと言われており、タイヤにとっては負担が大きな変更になっています。ちなみにrally1は1.6リッター直噴ガソリンターボエンジンを搭載します。リストラクターによって吸気量を制限されていて、出力はおよそ380馬力前後を発揮すると言われています。これに100kw/180Nmのモーターを搭載するハイブリッドシステムが組み合わされシステム出力は500馬力以上/500Nm以上を発揮します。
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市販車では18インチどころか20インチオーバーのタイヤまで純正サイズとして登場しています。タイヤの厚みがどんどん薄くなっている現在、競技車両も同様の変化が求められており、ラリー用18インチタイヤの採用や、F1の18インチは、エアボリュームの減少にまつわるタイヤ開発の難しさはあるものの、レースや競技で得られたノウハウのフィードバックがイメージしやすいものになっています。
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ピレリのラリーアクティビティマネージャーであるテレンツィオ・テストーニ氏は、「レースはピレリにとってもっとも重要な研究開発ツールであり、レースとロードをつなぐ“旅する研究所”であり、プロセスや素材に関する情報がノンストップで流れ、常に進化を続けています」、とコメントしています。
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今回持ち込んだ1300本超のタイヤを取ってみても、rally1用のソフトとハードコンパウンドが日本の気候やコースに合わせたコンパウンドであるのは当然のこと、rally2用として持ち込んだタイヤも、ハードコンパウンドのP Zero RA5は12戦のラリーカタルーニャ(ラリースペイン)でデビューした新型コンパウンドであり、ソフトコンパウンドのP Zero RA7+Bは、RA7→RA 7+→RA7+A→RA7+Bと3度のバージョンアップが図られ、日本ラウンド用にバージョンアップしたコンパウンドとなっています。
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文字どおり休むことなく日々進化しているわけです。今回のラリージャパンでは、全開走行するSSステージが山中の林道だけでなく村の中にも設定されていて、軒先をかすめ猛烈な速さで駆け抜けていくラリー車を見ることができました。ふと足元を見れば、紅く色づいた落ち葉が雨に濡れ路面を覆っています。そんな私たちが日常的に使っている路面を、猛然と駆けていくラリー車の迫力、ドライバーのテクニック、そしてそれらすべてを受け止めパワーを路面に擦り付けるようにグリップするタイヤの性能に改めて驚かされました。