電流制御で自由自在のBEVが軽々と日産GT-R超え
ところで、近年では自動車の電動化が進み、HV(ハイブリッド)やPHV、BEV(バッテリー電気自動車)など、さまざまな仕組みのパワートレインが登場している。
電動化モデルに乗ると、発進初期をモーター駆動としているため、トルクフルで力強い加速感を体験できることが多い。もっとも多くの注目を集めたのはテスラ・モデルSの登場だったのではないだろうか。外観的には4ドアのスポーツセダンであるテスラ・モデルSは、停止状態からアクセルを踏み込むだけで0-100km/h加速3.0秒を可能としていて驚かされた。GT-Rのようなローンチコントロールを作動させる必要もなく、より手軽に最高の発進性能を引き出すことが可能だ。さらに、最新のアップデートされたモデルSは2.1秒で100km/hに達するという。
そこで、0-100km/h加速をもっとも速く走れるのはガソリンエンジン車かHV車なのかBEV車なのか、という疑問が多くのユーザー間で話題となった。
結論からいえば、少なくともガソリンエンジンで強力なモーターを搭載する電動車に立ち向かうのは不可能、ということだ。
ガソリンエンジン車の場合、エンジンが最大トルクを引き出せる回転数に達する必要があり、かつ一定の負荷がかからないとエンジンはトルクを発生できない。さらに摩擦クラッチの滑りをコントロールして徐々にエンジントルクを駆動系に伝達していかなくてはならず、そこでの摩擦抵抗や機械損失が大きい。
では1000馬力以上のハイパワーで走らせたらどうか、というと最終的には駆動力を伝えるタイヤのグリップをいかにコントロールできるか、というトラクションコントロールの領域に行き当たる。
タイヤを空転させてしまってはトラクションが得られないのでタイヤの滑りを感知してエンジン出力をマネージメントする必要が生じるわけだ。それはスロットルを制御して行うのだが、ガソリンエンジンのスロットル制御は電気モーターに比べて圧倒的に不利である。
電動モーターの場合、ゼロ回転から最大トルクが引き出せ、電流制御でトルクも回転数も簡単に制御できる。モーターの出力軸とタイヤの間にクラッチのような摩擦材がなく、直結で結ばれているので機械損失も少ない。タイヤの滑りもミリセコンドの微小域で細かく正確に制御できる。
このように100km/h発進加速に特化したチューニングを施さなくても、当たり前のように速く走れてしまうのが電気モーター駆動車の特性と言える。重たいバッテリーも、駆動輪に荷重を加えタイヤの滑りを抑制する意味では効果的だ。テスラ・モデルSのように4輪駆動であれば最強の発進加速性能が得られる。
ガソリン車と電動車のどちらが発進加速が速いか、というのは明々白々なのだった。