専用色や全車共有色の設定などブランドごとに異なるカラー戦略
同じクラスでも使い方や目的はさまざま
もうひとつの違いは「性格の違い」です。たとえば、同じクラスのSUVであるトヨタの「ハリアー」と「RAV4」では、基本色は同じ8色としながら、カムリの配色に近いハリアーに対し、RAV4には「グレイッシュブルー」や「アーバンカーキ」といった明るい色を加えています。
また、軽自動車のアウトドア派であるスズキの「ジムニー」と「ハスラー」にも違いがあります。両車とも基本は明るい配色ですが、ジムニーは山間でも目立つ蛍光色のイエローや、アースカラー的なアイボリーを設定。一方、ハスラーは彩度の高いオレンジやブルー、グリーンなどが印象的です。
同じクラス、カテゴリーであっても、たとえばセダン的な乗り方なのか、よりアクティブな使い方なのか、そうした性格付けの違いによって色を変えているのです。
特別なクルマには特別な色がある
そのほかでは「専用色」というものあります。有名なのがホンダの「チャンピオンシップホワイト」で、ご存じタイプRの専用色です。スポーティなクルマが好きな方には、たとえば新しい「フィット RS」にもこの色が欲しい、なんて声もありそうですが、そうは行きません。
似たような例では、スズキの「スイフト スポーツ」に設定された「チャンピオンイエロー」があります。いずれも、特定のグレードを表現する色としてそれ自体に価値を与えたことが特徴です。
以上のように、車格や性格の違いなども含め、クルマのカラーはCMF(カラー・マテリアル・フィニッシュ)デザイナーという、エクステリアとは別のチームが担当するのが一般的です。チームは車種ごとに明快なコンセプトを立て、場合によって新色開発も行いますから、当然各車で配色も異なってくるワケです。
カラーとカタチを分けないマツダデザイン
最後に、ボディカラーについてはやはりマツダ車を取り上げなくてはいけないでしょう。「魂動デザイン」として共通のスタイルを持つ同社のラインアップですが、「色も造形の一部」として、基本的なボディカラーを各車で共有しているのが特徴です。
11月15日には、新しいマツダの赤として「アーティザンレッドプレミアムメタリック」を発表、色についての深い追求を進めていますが、どの車種を選んでもメーカー厳選のカラーを体験できる点は、他社にはないじつにユニークな姿勢と言えるでしょう。
さて、今回は車種によって異なるカラーバリエーションの理由を整理してみました。どの色の設定にも相応の理由がありますが、たとえば「フルオーダー」的なメニューがあってもいいのでは? と思います。一定の金額と納期を条件に、そのメーカーが持つすべての色から自由に選べれば、クルマ文化にも寄与すると思うのですが。