専用チューンの足まわりで上質感ある乗り心地のe-POWER車
次に試乗したのは、新型セレナの最上級グレードとなるe-POWERのLUXION。タイヤは全グレード共通の205/65R16サイズだ。走り出してすぐに、あれれ、ガソリン車とはけっこう違う……と感じられたのも本当だ。ガソリン車よりも重厚、しっとりとした乗り心地になり、例の意図的な段差の乗り越えでのショック、振動の軽微さ、収まりの良さがあるのだ。
また、ガソリン車で気になった、ステアリングの戻し時のスッキリ感のなさも解消。切る、戻すどちらの方向もスッキリしているのだ。言い換えれば、より上質感ある乗り味に躾けられているということだ。これはおそらく、LUXION以外のe-POWERモデルにも共通するはずだ。
というのも、開発陣に確認したところ、ガソリン車に比べてe-POWER車は、フロントで80kg、リヤで20kg重くなり、そのためサスペンションのバネ、ダンパー、そしてパワーステアリングのチューニング(味付け)もe-POWER専用となるのだそうだ。その重さもまたガソリン車とは違う、重厚でしっとりとした乗り味に貢献していることは言うまでもない。
ところで、ドライブモードについてだが、BEVのサクラでも感じた(というか日産開発陣に指摘した)、ドライブモードスイッチの位置には疑問が残る。サクラ同様にステアリング右下、インパネ右下の上下2段のスイッチ類の中に配置されているのだが、サクラと違い上段、右端に位置変更されているのはまだいいが、それでもブラインド操作で切り替えやすい場所とは言い難い。
「一度、エコやスタンダートにセットすれば、そのまま切り替える必要はないのでは」という意見もあるだろうが、平坦路から山道に入った場面などで、走行中に切り替えたくなる、クルマの走らせ方が分かっているドライバーにとっては、不満点のひとつになりそうだ。
というのも、エコモードはアクセルレスポンスと加速力がちょっと大げさなほど穏やかになり、車内でどこかにつかまれない赤ちゃんやペットを乗せ、のんびりと走るには、燃費も含めて適切だが、個人的にはちょっと穏やかすぎる印象もある。普段使いとしてはやはりスタンダートモードが適切で、走りやすさにもメリット大である。このあたりの切り替えも、シーンによってありうるわけだ。
では、スポーツモードはどうかと言えば、新型セレナのe-Pedalはドライブモードとは連携せず、任意にセットするわけだが(その作動、減速・回生感は初期よりずっと自然になった)、スポーツモードにセットするとアクセルレスポンスが高まるだけでなく、アクセルペダルと右足が駆動モーターと直結するような、BEVのアリアを思わせる(ちょっと大げさだが)電動車感が強まるのがポイント。ただのスポーツモードではない新型セレナの100%電動駆動車としてのさらなる魅力となりうるモードなのである。
そうしたモード切替の変化の大きさ、意味合いからも、ドライブモードスイッチの位置は、もっと切り替えやすい場所にしてほしてと願うわけである。
燃費性能はe-POWER車が18.4~20.6km/L(グレードによる)。ロングツアラーとしての魅力はe-POWERモデルに軍配があがるのは当然である。LUXIONであれば同一車線、全車速域でハンズオフドライブが可能になるプロパイロット2.0も標準装備されるのだから、なおさらだろう。
一方で、WLTCモード13.0~13.4km/L(グレードによる)の2リッターガソリンモデルは街乗り中心のドライバー、家族にとっては価格面も含めてバリューはあるはずだが、やはり電動化時代には、電動感が一段と強まり、より上質な走行感覚が得られ、燃費性能にも優れるe-POWERモデルを選ぶのが正解だろう。
なお、新型セレナの車両概要、パッケージ&ユーティリティ、安全・先進機能については、すでに掲載済みの記事をご覧いただきたい。