ランエボの復活を切望して止まない1日となった
まずは最新の市販モデル2車をオフロードコースで試乗する。高低差の大きなモーグル路、ハイスピードのフラットダート路、ジャンピングスポットやすり鉢状の難しい路面をノーマルタイヤで軽々と走破する。当日は大雨で路面は泥濘、スリッピーでトラクションがかかりにくいはずだが、電子制御のブレーキLSDやトラクションコントロールが好作動を見せ、三菱車らしい悪路走破性を改めて確認できた。
そして、トライトンのクロスカントリーラリー開発車仕様の助手席に乗り込む。ドライバーは三菱自動車でテストドライバーを務めるK氏。ランエボの開発で何度か一緒になったことがある若手有望株だ。真っ赤な三菱レッドにカラーリングされたトライトンには悪路用のマッドタイヤが装着されているが、車内はノーマルのままでロールケージも入っていない。
聞けばサスペンションもエンジンもノーマルのままなのだという。それでもパワフルなクリーンディーゼルターボエンジンはトルクピックアップがよく、急斜面を難なく登っていく。トランスミッションはマニュアルの6速。アイシン製でかつてトヨタ・スープラに搭載されていたのと同じタイプだとか。
トライトンは堅牢なラダーフレームにフロント縦置きエンジンレイアウトを採用。センタートランスファーから前後アクスルに駆動力を均一にデリバリーする。前後デフは機械式でデフロックされており、タイトターンはクルマを滑らせてクリアするが、低ミュー路ではマッチングが良さそうだ。
ブレーキはABSを装備せず、もちろん三菱が得意とする電子制御AWCなどもない。昭和スタイルともいえるレトロオーソドックスなパワートレインをノーマルのまま使い、高い耐久性と信頼性、メンテナンス容易性を活かして闘うつもりのようだ。
ノーマルシートに3点式シートベルトでは身体をホールドできず、アシストグリップに捕まっているのが精一杯だったが、若手のKドライバーは楽しそうに操っていた。
やはり作り手が楽しみながら、実戦の場で技術を磨く取り組みは自動車メーカーの士気に関わり、働く人たちのモチベーションを維持するのに重要だ。
景気に左右されず、一貫した信念を貫く姿勢が世界中のファンを魅了するのだ。新生ラリーアートの活動が、また多くの感動を呼び起こし、できればレースシーンで活躍するランエボの復活にまで繋がれば最高だ。それを願わずにはいられない1日となった。