そもそも売る気がない場合も!?
3)同業他社対策
ASKの表示には同業他社対策も含まれます。こちらの店頭価格より微妙に安く設定されたりと、値付けの目安にされるのを防ぐ意味合いがあります。
また、特定の車種に精通した専門店が相場を牽引することも少なくありません。無闇に相場をつり上げ、多くのユーザーにとって手の届かない存在とならないよう、あえて価格を「ASK」とすることで相場上昇を未然に防いでいるケースも確かにあります。
4)海外需要対策
日本人の感覚では「こんなの高すぎだろ!」とツッコミたくなるような価格設定でも、海外の人からすれば「価格は気にしないからとにかく買いたい」という風に映る場合もあります。
日本人相手なら500万円が上限だけど、外国人なら1000万円でも売れる! といった具合に、「ASK」の表記をフル活用(?)して販売をするのです。国内専用車なんて、日本車が人気のアメリカからすれば喉から手が出るほど欲しい場合もあるわけですから、お金がある人にとっては高い安いの問題ではないのです。
5)じつは商品車じゃない場合も
意外と多いのがこちらです。事実上の非売品だけど、店舗のオーナーが認めた人にしか売る気がない、反対に貴重なクルマだから事実上のコレクションなので売りたくない。でも注目度は高まるから、カタチ上は商品車として売る。その代わり、価格設定は「ASK」にしておいて、問い合わせが来たら「現在商談中」と答える……といった具合です。
大通り沿いのショールームにフェラーリF40が展示されているとしたら……。それだけで注目の的です。いまの時代、放っておいても、クルマ好きがめざとく見つけ、あっという間にSNSで拡散してくれます。下手をすると、あっという間にマニア向けの観光スポットとなりかねません。そんな「貴重な広告塔」があっさりと売れてしまったら、また次の候補を探さなくてはなりません。とはいえ、F40を上まわるインパクトを持つクルマなんてそうそうありませんし……。
まとめ:本当に欲しい人に買って欲しい? それとも?
貴重なモデルであればあるほど「海外に出したくない」と、頑なに国内在住のユーザーにしか販売しないというスタンスを貫く店舗があります。そのいっぽうで、「外国人に売却した方が高く売れる」と、商売っ気たっぷりなところも。このあたりはオーナーや社長さんの考え方次第で大きく意味合いが変わります。
このように、「ASK」にはさまざまな意味が込められています。1〜5の要素が複数に絡むこともしばしばです。いずれにしても「冷やかしはお断り」が本音です。
「ASK」という、とてつもなく高い壁を乗り越え、どんな金額を提示されても臆することなく「わかりました。これください」と言える人こそが、現代における勝ち組の構図なのかも……しれません。