いまが買い? 1代限りで消滅したハイブリッドスポーツカー「CR-Z」の魅力とは (2/2ページ)

他モデルの影響を受けたホンダCR-Z

ベースとなった2代目インサイトとは

 2009年に登場した2代目インサイトは、ハイブリッド車のパイオニアといえるプリウス対抗馬としてデビュー。プリウスと比べてリーズナブルな価格で販売したこともあり、登場後は月間販売台数1位になるなど、すぐに人気モデルとなりました。

 ボディバリエーションは5ドア・ハッチバックのみ、プラットフォームはフィットやシビックを流用した専用設計としましたが、センタータンクレイアウトを採用するフィットとは違い、燃料タンクをリヤシート下に配置しています。

 パワーユニットは1.3リッターエンジンとモーターを組み合わせたハイブリッドユニットを搭載。低速走行時はEV走行、加速時はエンジン走行をモーターがアシスト、高速走行時はエンジンのみ作動とプリウスが搭載するTHSよりシンプルな構造でしたが、その分、コストダウンが可能でした。

 2代目インサイトは販売から2年間ほどは好調な販売を続けましたが、3代目プリウスに対して徐々に劣勢となり、マイナーチェンジでCR-Zに搭載されている1.5リッター+モーターのハイブリッドユニットを搭載する「エクスクルーシブ」などを追加しますが、デビュー時ほどの売れ行きを取り戻すことなく2014年に販売終了。

 その後、2018年にシビックをベースとした3代目が登場しますが、国内仕様は今年、生産が終了となりました。

CR-Zのルーツ? 歴代CR-X

 CR-Zのデザインやコンセプトに大きな影響を与えたといえるCR-Xは1983年にデビューした初代から、2代目、さらに大きくコンセプトを変えたCR-Xデルソルへとモデルチェンジされていきました。

 FFライトウエイトスポーツとして大きな人気を集めた歴代CR-Xの歩みを振り返っていきましょう。

初代(1983〜1987年)

ボディサイズ:全長3675mm×全幅1625mm×全高1290mm,ホイールベース2200mm

 1980年代にシビックの兄弟車として販売されていたバラードの2ドアクーペとして登場した初代CR-X。車名はバラードスポーツCR-Xとして販売されていました。

 元々、アメリカ市場で販売することを目指したコミューターとして開発されたためか、デビュー時のキャッチフレーズは “デュエットクルーザー”。ホンダ自身はスポーツカーというよりスペシャリティカーとしてのイメージを打ち出していました。

 しかし自動車ファンは新世代のライトウエイトスポーツカーだと熱狂的に受け入れ、メディアは夢中になってサーキットなどでAE86などとラップタイムを比較しました。

 デビュー時には1.5リッターと1.3リッターエンジンをラインアップしていましたが、1984年には最高出力135馬力を発揮するZC型1.6リッターDOHCエンジンを搭載する「Si」を追加。ボンネットにパワーバルジを設けたことやリヤスポイラーを標準装備したことが他のグレードとの違いとなります。

 1985年のマイナーチェンジでセミリトラクタブルヘッドライトを固定式にチェンジ。バンパーなどのデザインも変更されました。

2代目(1987〜1992年)

ボディサイズ:全長3800mm×全幅1675mm×全高1270mm、ホイールベース2300mm

 車名から“バラード”が取れ、CR-Xとなった2代目は1987年にデビュー。デザインなどコンセプトは先代から受け継ぎながらボディサイズをやや拡大。ホイールベースも100mm延長し2300mmとなりました。

 キープコンセプトとなったエクステリアデザインでしたが、開放感を演出することを目的にルーフからリヤエンドまでガラスで覆われたグラストップを採用し、後方視界を確保するためエクストラウインドウを装着するなど攻めたデザインとなっています。

 プラットフォームを共有する4代目シビック同様、フロント、リヤともにダブルウイッシュボーンサスペンションを装着。初代と比べ操縦安定性が大きく向上しました。

 パワーユニットは1.5リッターと1.6リッターDOHCエンジンをラインアップしてデビューしましたが、1989年に最高出力160馬力を発揮する1.6リッター直4VTECエンジンを搭載した「SiR」を追加。

 さらに走行性能を高め、初代を上回る人気と販売台数を記録しました。

3代目(1992〜1999年)

ボディサイズ:全長3995mm×全幅1695mm×全校1255mm、ホイールベース2370mm

 ライトウエイトスポーツ随一の人気を得ていた2代目の後を受け1992年に登場した3代目は初代、2代目と大きくコンセプトを変えてデビュー。

 CR-Xデルソルと名付けられた3代目は当時、ユーノス(マツダ)・ロードスターが世界的に人気を得ていたことも影響したのか、タルガトップを備えたオープンカーとなったのです。

 ロードスターとは違いフルオープンではありませんでしたが、世界初となる電動格納式ハードトップを備え、2代目同様、1.6リッターVTECエンジンを用意するなど話題性は豊富なモデルでしたが、歴代CR-Xファンからは酷評を受け人気は一気に低迷。結果的にブランド消滅を向えることになりました。

 このCR-Xデルソルに筆者も数年乗っていましたが、電動格納式ハードトップの開閉動作は非常に遅く購入後、しばらくするとオープンにすることをためらうようになったのを覚えています。

 ただ、走行性能は優れており、とくに先代モデルと比べてサスペンションストロークが長くなってことで、乗り心地が向上したことが印象的でした。

人気? 不人気? CR-Zの中古相場

 CR-Zの中古車相場は執筆時で30〜455万円。価格に大きな差がありますが300万円を超える車両はすべて無限が手掛けた300台限定販売のコンプリートカー「MUGEN RZ」。走行距離が1万km以下の車両には450万円を超える価格が付けられていました。

 この「MUGEN RZ」を除くと価格が高いモデルは走行距離が5万km以下で、高年式の車両が210〜240万円。リチウムイオンバッテリーを搭載した2012年以降のモデルは70万円から、フロントフェイスなど意匠チェンジなどをおこなった2015年8月以降のモデルでも130万円から販売されているなど、比較的手に入れやすい価格帯で販売されています。

 ちょっと古い国産スポーツカーの価格が上がり続けている現在、CR-Zの買い時はいまかもしれません。

まとめ

 CR-Zを振り返ると、けっこう魅力的なところが多いことがわかりました。ただ、スポーツカーとして“尖った”箇所が見当たりません。そこが人気を得ることができなかった理由ともいえます。

 とはいえ、いまだに貴重なハイブリッドスポーツとしてモーター特有の加速を楽しめることや、なによりスタイリッシュなフォルムを備えているのも事実。

 リーズナブルに購入できれば、買って後悔しない1台といえるでしょう。


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