この記事をまとめると
■1960年代に登場した美しいクーペボディのクルマたちを振り返る
■ボディパネルの作製が手作業だったクルマやコンセプトカーの予定だったクルマもあった
■軽自動車ながらジウジアーロの案を生かして設計したスペシャリティクーペも存在した
いまでも語り継がれる伝説のクーペは1960年代のクルマだった
近年は、旧車のなかでも1980年代を中心としたネオ・クラシックカーブームが続き、市場も盛況のようです。たしかにこの時代には個性的なクルマが多く見られましたが、さらに20年ほど遡った1960年代もじつは名車の宝庫でした。そんななかから、ここではスタイリッシュな2ドアクーペ5台を選んでみました。
●世界を目指した高級グランツーリスモ
まずは、定番であり鉄板のトヨタ「2000GT」から。当時、国際的に通用するクルマの製造を計画していたトヨタが、「国産初の最高級GTカー」を謳い、純国産にこだわって1967年に登場させた、文字どおりの名車です。
ヤマハとの共同開発による直列6気筒DOHCエンジンを搭載したボディは、典型的なロングノーズ・ショートキャビンの佇まい。対米輸出の法規に対応したリトラクタブルランプは、抑揚のあるボンネットと見事にマッチングしており、固定式のフォグランプとの組み合わせが独自の顔付きを生み出しました。
サイドはシンプルな面で構成され、ドアのカットラインの美しさも見所。スポイラーを兼ねたようなシャープなエッジを持つリヤパネルも特徴的です。この、どこかジャガー「Eタイプ」を彷彿させるスタイリングは、社内デザイナーの野崎喩によるもの。その才能には、いまさらながら驚きを隠せません。
●宝石のように輝くボディを持つエレガントクーペ
2台目は日産の初代「シルビア」です。すでにデビューしていた「ダットサン・フェアレディ」をベースにした同車は、1964年の東京モーターショーに「ダットサン・クーペ1500」の名で出品、翌年の正式発売となりました。
社内の木村一男のスケッチを元に、当時の日産デザインのアドバイザーであったアルブレヒト・フォン・ゲルツが助言を与えたスタイルは、「クリスプカット」と呼ばれる継ぎ目を廃したボディが秀逸。実際、ノーズからショルダー、リヤエンドまで続く広いカット面の美しさは他に類を見ません。
加えて、丸目4灯と多層フィンによるフロントグリルはじつにエレガントですし、そもそも、ノッチバッククーペスタイルのプロポーションが絶妙です。ほぼハンドメイドで、わずか554台の製造という点も同車の価値を高めているのかもしれません。