この記事をまとめると
■赤いボディカラーが色褪せる原因を解説
■赤は紫外線をもっとも多く吸収する色なため塗装の劣化が激しいとされている
■最近のクルマでは余程適当な管理をしなければ劣化しずらくなっている
赤が色褪せる原因は紫外線にあった
車歴の長いクルマは、経時変化でそれなりの劣化が見られるようになるが、気になるもののひとつにボディ色の「色褪せ」がある。もちろん、屋根付き車庫での保管、こまめなワックスがけで維持された車両と、青空駐車、ワックスもかけたことのない車両では、劣化の度合いが大きく違ってくるのは言うまでもないが、長期間車両を維持する上で気になるのが、やはりボディ色の退色だ。
なかでも、見すぼらしく退色した例をよく目にするボディカラーが「赤色」だ。色焼けと表現する場合もある。黒や白、あるいは青、緑系の塗色ではなく、赤系の色褪せを多く目にするのはなぜだろうか? 少し科学的に考えてみることにした。
まず、人間の目が色を認識する仕組みだが、これは物体が反射する可視光線の種類によって違ってくる。言い換えれば、反射光の色を見ているわけで、すべての可視光線を反射する物体の色が白、逆にすべての可視光線を吸収する色が黒で、このほか一部の可視光線だけを反射する色が、「赤、橙、黄、緑、青、藍、紫」といった色相である。
さて、赤が色褪せてしまう理由を考えてみるが、赤は、赤い可視光線だけを反射することで認識される色で、逆にいうと、青系の色は吸収されることになる。可視光線は、もっとも波長の短いものが紫、長いものが赤となり、紫より短いもの(不可視)を紫外線、逆に赤より長いもの(不可視)を赤外線と識別している。
このうち、物体(人体も同じ)に対して悪影響を及ぼすのが紫外線で、日焼けや過度に浴びれば皮膚癌の原因になるとも言われている。もちろん、自動車の塗色に対しても同様で、紫外線も含めた青、紫系を吸収し、赤系を反射光として人間に見せている赤色は、紫外線によるダメージをもっとも大きく受ける色でもあるのだ。赤色塗装のクルマが、経時変化で大きく色褪せするのは紫外線の吸収によるもので、逆に、すべてを反射する白が強い塗色と言われるのはこういった理由があるのだ。
なお、再塗装の場合も、やはり赤色の色褪せが著しいのは変わらず、塗料自体はアクリル系よりウレタン系のほうが強いとされている。
ちなみに、紫外線によるボディへの影響は、プラスチックパーツも同様で、現在主流となっているヘッドライトのプラスチックレンズが、経時変化で黄ばんでくるのはこのため。ボディ塗色も、プラスチックレンズも表面を研磨することで元の状態に復活させることは可能だが、ホディ塗色は塗膜が薄く、研磨することで下地が現れてしまう場合がある。
さて、実際問題だが、赤い塗色が見るに耐えないほど色褪せしてしまうケースは、現代の塗料、塗装技術を考えると、相当に劣悪な環境でクルマを維持(維持と言ってよいかどうか、極論すれば野ざらし)した場合に顕著だと考えてもよいだろう。ボディカラーを選ぶ段階で、赤色の色褪せはあまり気にしなくてよいのかもしれない。