いま金融車に乗っている人はほとんどいないだろう
もっとも、今の今は金融車を手に入れて乗っている方、国内ではごく稀ではないでしょうか。まず、ネットオークションはルール改正で名義変更のできないクルマの取引はできなくなっていますし、車種によらず海外に輸出したほうがより高く売れるからにほかなりません。もちろん、正規輸出もまた所有者による権限移譲が必要なのですが、ここは「軽くばらしてパーツ、部品扱い」や「クズ鉄扱い」なんて抜け道もありますからね。
ちょっと前までは、小さな中古車屋さんにいくと値札がついてない新古車みたいなクルマが転がっていて、社長に尋ねると「ニヤリ」とゲスな笑みを浮かべられたりしましたが、今となっては昭和っぽいエピソードでしかありません。
昭和といえば、そもそも金融車は当時の反社会組織にとってはビジネスの一環だった、みたいなことを耳にしたことがあります。取り込み詐欺と似たような手口ですが、まずはローンが組める人物(たいていは覚せい剤中毒者や、戸籍を売却するような住所不定無職)を使って高級車を購入。もちろん、返済なんて端からしないで、すぐさま組織が運営している金融業者に売却(というか移譲)。そして、この金融車を売りさばくのですが、買わされる相手というのは組織からお金を借りているなど弱みがある人物。もちろん、金融車とはいえ売値は安いわけがなく、足もとを見られて新車並みにふっかけられるのがデフォルトでしょう。その売買が済んだところで、組織は仕上げとしてローン会社に電話をかけるのです。
「あー、もしもし、オタクでバンザイ(返済不能)した〇〇さんのレクサスね、どこの誰がゲットしたか知ってるよ! なんだったら、ウチで回収してくるけど……。ああ、もちろん格安で! なに、世の中助け合いだろ、助け合い、ねー」とかなんとか言っちゃって。
さらに、回収してきた金融車をローン会社から正規の手段で買い取り、組織が運営している中古車ショップで売ったりするなんてこともざら。1台のクルマで、一体いくら稼いでいるのか、まったく悪い奴ほど頭が切れるものです。
なお、名義変更できないという弱点ですが、これまた反社組織に言わせれば「寝言は寝て言え」と抜け道があるそうです。が、こればっかりは書くわけにはいきません。ともあれ、前述のとおりそんな危ない橋を渡るより、とっとと海外で売りさばくほうが「儲かるョ」とのこと。
悪いこたぁ言わないから、これ読んでる方はゆめゆめ金融車などに手を出しませぬよう、くれぐれもご自戒ください。世の中、うまい話などひとつもないのですから!