9速ATと6速MTを「両方使える」クルマってどういうこと? ケーニグセグCC850の謎のトランスミッションを解説 (2/2ページ)

CC850に用意された6速MTモードの意味

 さらに、CC850の9速「LST」は、このパドルシフトによる9速AT機構に、クラッチペダルを操作する6速MT機構を組み合わせた方式のようだ。といっても、ベースがLSTなので、一般的なMT車のクラッチとは基本的に異なり、クラッチペダルの踏み込みによってクラッチ断続の電機信号が送られるシステムと考えてよいだろう。

 ただ、パドルシフトによるAT9速に対してMT6速ということは、段数が少ないぶん、ギヤのつながり(各ギヤの守備範囲)に関して不具合が生じるのではないかと疑問が生じるかもしれない。この点に関しては、MTモードを選択する際にいくつかの走行モードが用意され、どのポジョンを選ぶかで使用されるギアが選定される仕組み(たとえば一般道仕様なら1〜6速、高速仕様なら1、3、5〜8速といったようなギヤ設定)となっているようだ。

 さて、9速AT仕様に加えて6速MT仕様を設けた理由だが、これはシフトレバーとクラッチペダルを操作することで、ドライバー自身が車両を操作している充実感を演出するためだと思われる。これは、通常のMT車が存在するのと同じ理由で、動力の伝達効率、シフト速度(ギヤのつながり速度)、つまりクルマを速く走らせるという意味では、パドルシフトによる9速ATモードが最速となる。MTモードは、あくまで車両を操る充実感を味わうためのシフト機構と考えてよいだろう。

 ケーニグセグ社のように車両の絶対性能を重視するメーカーでも、MTによるシフトレバーとクラッチペダルの操作感は、スポーツカーを走らせる上で必須不可欠な要素と考えているようだ。スピードだけが、スポーツカーの成立要素ではないということだ。


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