「不安だから他車についていこう」という考えは危険!
圧雪路では雪ブロックの剪断力には多くを頼れないが、スタッドレスタイヤに無数に刻まれたサイプと呼ばれる細かな溝が雪路に引っかかるようなイメージでグリップを確保する。サイプが多いほどグリップは高まるが、やはり相手は雪。乾燥舗装路を走るような通常のグリップが得られると思ってはいけない。
外気温がマイナス20度、路面温度がマイナス10度となるような北海道の極寒冷地では氷結路がアスファルトに近い硬さになることもあり、夏タイヤで走れてしまう場面もあるが、一般的な地域では御法度といえる。
完全に凍ったアイスバーンではスタッドレスタイヤといえども氷結路面に食い込むことはできず、柔らかいゴムの粘着性と細かなブロックパターンの変形によるヒステリシスロスでかろうじてグリップを引き出す。それだけに坂道発進となればスタッドレスタイヤ+トラクションコントロールを駆使しても発進は難しい。停止も同じだ。
多くのクルマがホイールを空転させ氷結路面を磨いてしまうと、ますますグリップ条件は悪化する。北国の市街地の交差点では磨き上げられたブラックアイス路面となり、平坦路での発進や停止も難しい。それだけに北国のドライバーは交差点のはるか手前からゆっくり減速し、横断歩道の手前で停止し、前方車との間隔も大きくとる。雪道ビギナーが北国の市街地に乗り入れ、そうした雪国での一般常識を知らずに車両間隔を詰めたり、遅れたブレーキングで追突事故を起こすことも多く注意が必要だ
ちなみに雪路で道幅の狭い急な坂道の通行は交互に行うのが基本だ。登坂中あるいは降坂中の車両がいるのに入り込んでは行けない。タイミング悪く交差してしまった場合は下りを優先(諸説あるが)するべきだ。登坂車は止まることは容易いが、再発進できるかはわからない。一方、降坂車はまず止まれるかどうかがわからない。この初動の能力差が優先権を決する。
また陥りやすいのが、不安だから他車についていこうとする行為。同じ軽自動車で登り坂を登って行く車両がいたから付いて行く、というのは危険だ。車種は同じでも、相手は4WD車であったり、スタッドレスタイヤにチェーンを巻いて完全装備としていたら、その雪道性能はスーパーカーと軽自動車くらいの差がある。近年都会派ユーザーに人気があるオールシーズンタイヤは、はっきり言って雪国ではほとんど役に立たない。都会で急に降雪があった場合でも自宅まで自走して帰れる程度の雪上性能と認識するべきだ。ましてや雪道ビギナーのドライバーが2輪駆動車+オールシーズンタイヤで降雪地域に行くのは絶対に避けてもらいたい。