タイプRはこだわりを持ってFF駆動を極めている
駆動方式にFFを選んだ理由は、小型乗用車の基本パッケージングとして、合理的かつ効率的な駆動方式と判断した結果だが、第1作目となったホンダ1300は、モデルとしての完成度に疑問が残っていた。これを払拭したのが次のモデルとなる初代シビック(EB型)で、ワイド&ローのシャシーディメンションを持ち、効率に優れたSOHCエンジンとの組み合わせで、新時代の小型車像を作り上げることに成功した。
シビックシリーズには、このとき動力性能を強化したRS(ロードセーリング)グレードが追加され、走りのファンを喜ばせたが、その後排出ガス規制対策の時代を迎え、高性能モデルの登場が許されない時代がしばらく続くことになった。
排出ガス規制対策が一段落した1980年代に入ると、高性能化の波が一気に押し寄せた。ホンダは一時期ターボ化で対応したが、パワーリニアリティに優れるエンジンは自然吸気方式と結論付け、シビック/CR-Xシリーズのホットモデルに新開発の4バルブDOHC、ZC型エンジンを搭載。その後、可変バルブタイミング方式のVTEC機構を開発し、ホンダエンジンの高性能ぶりを強く印象付けたが、駆動方式はホンダ1300以来、すべてFF方式が使われていた。
ホンダは、合理的かつ効率的なことを高性能の原点と考え、量産車にはすべてFF方式を採用する方針で臨んできた。そして、そこに高性能エンジンや運動性能方向に振り込んだシャシーチューニング、簡素(スパルタン)な艤装類などでまとめたモデルとして、走りの「タイプR」を設定するにおよんだわけである。
実際、歴代の「タイプR」に乗ってみれば、贅肉を削ぎ落とし、性能を研ぎ澄ました結果が、タイプRだと気付かされることになる。駆動系の重量によって動き自体が緩慢となる4WD方式、プラットフォームを新造しなければならないFR方式、パワーリニアリティの重視から過給機の装着は最近になるまで回避。走りに特化したホンダの「タイプR」は、ホンダ量産車技術の昇華を象徴するモデルとしての役割が課せられているようだ。