法規のせいで大量の資源が無駄になっている!?
ところでクルマに関するルールとしては、主に走らせ方を定めた道路交通法に注目しがちだが、公道を走っていい状態を定めた保安基準(道路運送車両法)についても忘れてはならない。
現実に即していないという理由もあって、運行前点検の義務化は廃止されているが、そもそも運行前点検は道路運送車両法によって定められていた。そのほか定期点検の内容も簡素化されているが、これらは車両の進化に対応した変更だ。
交通ルールは絶対に不変というわけではなく、時代に応じて改正することはあり得る。
その意味で、なんらかの対応をすべきと思えるのが非常信号用具の搭載義務だ。現実的には「発炎筒」を搭載することが大半だ。国産車では助手席の足もとあたりに設置されている発炎筒はいつ何時でも外してしまってはいけないものとなっている。
とはいえ発炎筒を使わないまま一生を終えてしまうドライバーも少なくないだろう。さらにいえば、発炎筒には使用できる有効期限(4年)が定められている。当然ながら保安基準で定められているので、有効期限を過ぎた発炎筒を積んでいても車検は通らない。
日本には二輪を除いて7800万台以上の車両が存在している。それらが定期的に発炎筒を変えているとすると、単純計算で毎年1950万本の発炎筒が必要になるし、そのほとんどが廃棄されていることになる。それは、あまりももったいない。
非常信号用具の搭載が必須という点は否定しないが、“発炎筒ロス”へなんらかの対応をしていくことは、今後求められていくことだろう。
最後に指摘したいのは、法律ではきちんと整備されているのに、メディアなどの啓もう活動によって誤解を招いてしまっているケースだ。
それは自転車の走行ルールである。気になっているのは、歩道走行の禁止についての社会的認識だ。
自転車というのは法律的には軽車両であり、基本的には車道を走るべき乗り物であることという基本ルールはかなり広まっているが、車道を走らなくてもよい例外として13歳未満の子どもと70歳以上の高齢者が定められている点は知られていないような印象がある。
とくに高齢者が「自転車は車道のみを走らなくてはならない」と思い込んでしまい、低速で車道を走ってしまうのは、かえって危険な行為といえる。そもそも自転車は危険だと感じたら歩道を徐行してもいいとされている。高齢化社会だからこそ、こうした例外がきちんとルール化されていることも啓もうしていく必要があるだろう。