高級セダンが狭く感じる「だだっ広だ」! いまどきハイト軽自動車5台の後席がとんでもない快適っぷりだった (2/2ページ)

広さだけならプレミアムセダンの後席を凌駕!

 とはいえ、後席居住スペースがただ広いだけでは、実際の着座感の良さにはつながらない。ここでのポイントはシートのかけ心地だ。軽自動車はさすがに高級車のようなコストを後席にかけられないのが普通だが、クッション以外にかけ心地の良さにかかるのがヒール段差。つまり、フロアからシートクッション前端までの高さ。ここが高いと太腿がシートの密着する自然な着座姿勢になる。一方、そこが低いと、いわゆる膝を立てた体育座り的着座姿勢になり、お尻だけで体重を支える着座姿勢になってしまうのだ。その点で褒められのはスペーシアの360mmとルークスの350mm。N-BOXは340mmでまずまず。タントは330mmとやや低いシート位置となる。

※画像はスペーシアの後席

 後席のかけ心地だけを見ると、ルークスは前席に負けない分厚いクッション感があり、N-BOXはソファ的クッション感が持ち味。タントはヒール段差こそ低いものの、背中の包まれ感、自然なサポートが心地よい。ヒール段差に優れるスペーシアはやや平板なかけ心地となる。総合的にはルークスが、広さ、かけ心地に優れた、総合的に「高級セダンも真っ青」な後席を備えたスーパーハイト系軽自動車になる(ここでは走行中の乗り心地には言及しない)。

 とくにN-BOXカスタムのシート地は高級感に溢れ、軽自動車の座席に座っていることを忘れさせてくれるほどだし、いまでは中古車でしか手に入らないものの、かつてあったタントエグゼのシートの贅沢感はそれこそ「高級セダンも真っ青」と言えるほど飛びぬけていた。

 また、後席の使い勝手の良さのひとつの評価基準となるのが、立ち上がり性。ヒール段差が低いと立ち上がりにくいのは当然だが(ローソファと食卓の椅子から立ち上がるのにどちらが楽かを考えれば理解できる)、もうひとつ、足引き性が重要だ。立ち上がる際、足を引くことで立ち上がりやすくなるのである。その点では、センタータンクレイアウトによって後席下に燃料タンクがないN-BOXが、たとえ後席を最後端位置にセットしていても、シート下が空洞になっているため、立ち上がりやすい。それ以外のスーパーハイト系軽自動車は、後席最後端位置だと足が引けない。ただし、シートをちょっと前にスライドさせれば解決するから、大きな問題にはならないだろう。

※画像はN-BOXの後席

 スーパーハイト系軽自動車のお約束装備!? と言えるリヤスライドドアのウインドウにあるロールサンシェード、そしてスペーシアとルークスにある天井のサーキュレーターも、「高級セダンも真っ青!」と思わせてくれる快適感をもたらしてくれる装備と言えるだろう。

 余談として、スーパーハイト系軽自動車、両側スライドドア車を好まない人にお薦めしたい、後席の居心地、かけ心地に優れた軽自動車と言えば、ホンダのN-WGN。シートは前後席ともに、基本的にN-BOXのフレームを使っているのだが、前席はもちろん、後席のかけ心地はN-BOX以上に心地よく、ドーンと腰を下ろしても底づき感がなく、ゆったりとしたソファ的なかけ心地を実現しているのだ。

 その理由は、N-BOXに対してシート表皮の伸び率を25%高め、ウレタンの硬度を5%ダウンさせ、なおかつ、座ったときに硬く感じるフレームを人から遠ざける配置にしてあるからだという。N-WGNの後席に座っていると、ハイトワゴン系ならではの空間の広さとともに、軽自動車の後席に座っていることを忘れさせてくれるほどの快適感が得られるのである。

 ちなみに筆者基準での後席の広さは、頭上に195mm(N-BOXは265mmだが)、膝まわりに最大320mmと、ハイトワゴン系軽自動車として、とくに頭上方向では最大級の余裕がある。


青山尚暉 AOYAMA NAOKI

2024-2025日本カー・オブ・ザ・イヤー選考委員

愛車
フォルクスワーゲン・ゴルフヴァリアント
趣味
スニーカー、バッグ、帽子の蒐集、車内の計測
好きな有名人
Yuming

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