銀座で営業するには東京隣接県の主要都市の知識も必要
東京のタクシー事業者に新人ドライバーとして入社したときには、もちろんこの乗禁地区についての説明を受けることになる。そのとき、「銀座で乗るお客はロング(長距離利用客)も多いが、新人は近づかないように(原則いくなということ)」という指導があるようだ。
まずは、乗禁地区内の規制が細かすぎ、知らないうちに違反行為を行ってしまうリスクが高いことがある。そして、銀座ならではの利用客の特性がある。タクシー利用客が全国的に減少傾向にあるなか、銀座界隈でのタクシー需要は根強いものがある。コロナ禍となり企業接待などが減少傾向にあるなかでも、たとえ東京都内在住ではなくとも、飲んだあとにはタクシーで帰るという人がほかの繁華街に比べると明らかに多いのである。
そして、設定された乗り場によっては、その位置関係から東名高速、常磐高速、中央高速沿線など、行き先方面がほぼ決まっていることもある。利用する人はタクシーに乗り慣れているし、そんな行き先がほぼ決まっている乗り場で、たとえば「取手ニュータウン(茨城県)まで」と言われ、「そこはどこですか?」と聞き返しもすれば、「そんなことも知らずにここで客待ちしているのか!」とトラブルになることも多いようで、都内の営業地域における地理すら十分明るくない新人のうちは「近寄るな」としているのである。
東京都内(23区及び武蔵野・三鷹市)の地理をほぼマスターし、東京隣接県の主要都市についても、降りるインターチェンジなどをお客と確認でき、「細かい指示はあとでお願いします」ぐらいのやり取りができないと、銀座乗禁地区では営業できない。
ちなみに銀座以外にも乗禁地区はいくつか存在している。乗禁地区ではないものの、主要駅のタクシー乗り場でも、例えばJRの駅ならば入構証(JRマーク)があれば、どの駅にも入ることができるが、もちろんその駅周辺の地理に明るくないと、「知らないのになんで客待ちしているんだ」と乗客とトラブルになることも珍しくない。
そのため、「新人のうちは駅につけるより流し営業を徹底するように」と指導する事業所もあるようだ。お台場地域も外国人や地方から出てきた人が利用することが多いので(都内の地理に明るくない)、地理に自信のない人は近寄らないようにと指導されることもあると聞く。
銀座以外にも乗禁地区は存在するし、規制こそないものの、トラブルを防ぐ意味から「新人のうちは近寄らないほうがいい」という場所が都内には結構あるのだ。