ただ流していてもお金にならない! 意外と知らないタクシードライバーの1日のルーティーンとは (2/2ページ)

世田谷を制する者はタクシー業界を制す!?

 夕方は会社に戻る人、帰宅する人の需要が期待できるので都心地域を流し、運賃が割り増しとなる午後10時までに休憩や燃料補給をし、割増時間(ゴールデンタイム)に備えるのも一般的な動き。その後はコロナ禍前ならばそれぞれが得意とする繁華街へ向かうのだが、コロナ禍となったいまはコロナ禍前に比べれば需要が減っており、ロング(長距離利用)客も少なく、厳しい現状が続いている。

 また“世田谷を制する者はタクシー業界を制す”といわれるぐらい、世田谷区の地理に詳しいと稼ぎも多くなるとされている。世田谷区もイメージ通りに富裕層が多く住んでいるので、夜遅くなるほど都心地域からタクシーで帰宅する人が多いし、1日を通じてタクシーの利用は多い。

 そのため土曜や日曜、祝祭日には車庫を出たらまず世田谷方面をめざす乗務員も多い(休日は千代田、中央、港区は需要が減る)。たとえば用賀あたりから渋谷駅までといった利用が半ば当たり前であったりして効率よく稼げるのである。

 一方で、世田谷区に詳しくない乗務員から見れば、どこも同じような街風景となっているし、住宅街には一方通行など複雑な交通規制もある。そのため世田谷区をできるだけ避けて乗務できるように動く乗務員も多い。

 コロナ禍を経て、現状では都内ですら乗務員数も減り、新規採用もままならないなか、タクシーの稼働台数自体が少ないので非常に回転がいい(実車走行頻度が高い)。また東京以外では、東京隣接県や大阪市内にあっては稼働しているタクシーが東京よりも少なく、電話などでの配車要請を断ることもあるほどフル回転状態となっているので、自分のルーティーンを守ろうとしても、お客に流されて(いつも流すエリアとは違うエリアへ連れていかれること)、そのまま流された場所でグルグルとお客を乗せてまわるといったことも頻発しているようだ。

 最近は大手事業者や無線グループでは、タクシーの配車アプリが普及している。しかし、アプリ配車に慣れない一部のベテランドライバーがアプリ配車要請に応じないことがある一方で、若年乗務員ほどアプリに頼った運行を行っていることもある。コロナ前にはアプリ配車をこなし続けるだけで、かなり稼ぎが良かったのだが、まだそこまで需要は回復していない。

 また、東京都心で営業できるタクシーに乗っているものの、都県境にある自分の営業所最寄り駅で朝から稼ぎ続ける乗務員もいる。1回あたりの利用距離は短いのだが、それが積みあがると、目立って営収(稼ぎ)は良くないのだが、1カ月トータルでみると、出番ごとに営収のデコボコが出ることもなく、平準的に営収を積み上げることで結果的にそこそこいい稼ぎになっていることが多い。まさに乗務員個々で営業スタイルが異なるといってもいいだろう。

 つまり、それぞれどこを流すかというものを決めてはいるが、乗客次第で違うエリアに流されてしまうことも多い。そうなった時に、流された場所からどのように自分なりの営業スタイルに戻すか瞬時に判断できることも(どの道を走れば効率よく戻れるか)、タクシー乗務員としての優劣を分けるともいわれている。アプリの要請されるままとか、お客に流されるままにタクシーを運転していると結果的に稼ぎが悪くなることもある。お客に流され、あまり詳しくないところにポツンと残された時に、自分の決めた営業ルートへすぐに軌道修正する力が乗務員の資質としては大切なのである。


小林敦志 ATSUSHI KOBAYASHI

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渡 哲也(団長)、石原裕次郎(課長) ※故人となりますがいまも大ファンです(西部警察の聖地巡りもひとりで楽しんでおります)

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