「濃さ」や「香り」を感じさせるクルマは珍しかった
輝きを放つ上質さをボディに落とし込む
そうして、いよいよ2015年に発売となった86 style Cbですが、デザイン的にはどのような提案があったのでしょうか?
まず、フロントはバンパーごと交換、シャープなヘッドライトは楕円の金属調ベゼルを付けたオーバル形状に変更。同じくグリルも楕円の柔らかい形状にすることで、どこか60年代のイタリア車を思わせます。もともと、初代の86は顔こそシャープでしたが、ボディの要所は大きな曲面で構成されおり、「顔」を丸く変えても違和感がなかったのです。
このグリルに施されたメッキの横桟とLEDのターン&クリアランスランプ、そしてフロントフェンダーのトリプルフィンに置かれたイルミネーションの組み合わせは、いずれも上質な「輝き」を表現。また、ニュアンスベージュとデミタスブラウンの2トーンボディは、それらの「輝き」をより上品に見せる効果がありました。
インテリアでは、黒檀木目調パネルやアナログのホワイトメーター、専用のレザー素材が、落ち着きのある居住空間を演出しました。
大人の女性を意識した香り立つデザイン
この「style」シリーズは、ファッションのなかでも、とりわけ女性目線での色や質感にこだわったとされ、実際に部署内の女性スタッフがメインとなって企画が進められたようです。いまどきそうした体制は珍しくありませんが、大人の女性をターゲットに、あたかもジュエリーや高級バッグなど、ある種の「濃さ」や「香り」を感じさせるクルマは珍しかったと言えます。
筆者は当時のオートサロンを取材しましたが、ハイファッションに身を包んだC&A開発部のスタッフが対応しており、一見社外のモデルが立っていたようにすら感じられました。開発者としては、そこまでのこだわりがあったのでしょう。
多くのクルマ好きに驚きを与えたのは、400万円を超える値札だけでなく、恐らくその「濃さ」や「香り」に理由があったのではないでしょうか。ただ、モーターショーのコンセプトカーには、今後もこれくらいのインパクトがあってもいいのではないでしょうか。