この記事をまとめると
■オートザム・クレフについて解説
■クロノスをベースとした4ドアセダン
■キャッチコピーは「新世代のスポーツサルーン」
なかなか出会うことのできない幻のクルマ
今では“魂動デザイン”を採用し、プレミアム感溢れるモデルたちをリリースして多くのファンを獲得しているマツダ。しかし90年代初頭には自社のシェアを拡大しようと5チャンネル体制を打ち上げた結果、近い車格のクルマが増え、お互いにシェアを食い合ってしまうという悲劇に見舞われた過去があった。
その代表格とも言えるのが、カペラの後継車種として登場した「クロノス」と、それをベースとする多くの派生車だ。
なかでも当時のオートザム店用にリリースされた「オートザム・クレフ」は、当時から現在に至るまで、路上で見かけることはほぼない幻のクルマとなってしまっている。
1992年5月に登場したクレフは、前述したように新たなマツダのミドルクラスセダンとして登場したクロノスをベースとした4ドアセダンだが、エクステリアについてはクロノスの面影は全くなく、クレフ専用の意匠がおごられていた。
そのデザインは、当時としては画期的なグリルレスのフロントマスクに角の取れた丸みを帯びたスタイリングとなっており、今改めてみると輸入車を思わせる悪くないものとなっていた。
キャッチコピーには「新世代のスポーツサルーン」で、4WDモデルにこそ直列4気筒2リッターエンジンが用意されていたものの、メインはV型6気筒の2リッターと2.5リッターとなっており、後者ではハイオク仕様で200馬力というスポーツサルーンに相応しい出力を持っていた。
しかし当時のオートザム店はキャロルやレビュー、AZ-ワゴン(ワゴンRのOEM車)などのコンパクトカーが主力商品となっており、そもそも3ナンバーボディを持ったミドルクラスセダンを求めるユーザーが少なかったことや、輸入車感のあるデザインも、オートザム店は輸入車であるランチアのモデルも取り扱っていたため、ホンモノの前ではなすすべ無しだったのだろう。
93年にはグリルレスが販売低迷の原因と考えたのか、グリル部分にスリットを入れ、大型フォグランプを備えたフロントマスクを持った特別仕様車「リミテッドX」をリリースするが、こちらもほとんど話題に上ることはなく、登場からわずか2年後の94年春には生産を終了。総生産台数は5000台ちょっとという惨憺たる結果となってしまった。