道交法はスムースな交通を生み出すためにルールブック
もちろん、たまたま左側に車線変更したら流れていたので追い越し車線を走るクルマを追い抜いて、たまたま100mくらいですぐに右側へ車線変更をしたと言っても、なかなか認められないだろう。
あくまでも左側車線をずっと走っていて、その先も走り続ける前提で、たまたま追い越し車線よりもペースが速かったので先行してしまったと認められる場合のみが「追い抜き」といえる。それでも、どのくらい車線変更しなければ追い抜きと認められるのかどうか明白な基準はない。前述したように追い抜きというのは、道路交通法では対象外の行為となるからだ。
そのため、どうすればルール違反の左側追い越しではなく、あくまで偶然に追い抜きと主張できるかどうかは現場の判断に委ねられる部分もある。追い抜き自体は違反ではないが、前後の動きから追い抜きと判断されるのか、左側追い越しと捉えられるか、その条件を断言することは難しい。
なお、追い越すときには右側からという基本ルールは高速道路だけに適用されるものではなく、一般道であっても守るべき基本ルールとなっている。
ただし、先行するクルマが右折しようとしているときに限り、例外的に左から追い越すことが認められている。こうした例外を設けておかなければ右折車がいるだけで渋滞が生まれてしまうからだ。
このように道路交通法というのは、取り締まるためにガチガチの規則を定めているのではなく、あくまでもスムースな交通を生み出すためにルールブックといえる。
スムースで、ルールを守った交通というのは、事故や渋滞を減らすことにもつながるものだ。左からの追い抜きについても、それが危険だと思えるシチュエーションであれば避けるべきだし、逆にスムースに流れるようであれば、本質的には正しい運転行為と考えるべきだろう。