限られたコストのなかで高級感を演出する姿にマークIIを思い出す
今回試乗したのは、ハリアーのZ“レザーパッケージ”で、調光パノラマルーフをオプション装着し、有償色のプレシャスブラックパールという、まさにハリアーのなかで“もっとも納期がかかる”人気グレードといっていいモデル(生産の都合もあり納期が長くなるが、それでもニーズが減らないのだから人気グレードといっていいだろう)。
運転席に乗り込み、スタートボタンを押すと、今回の改良での目玉のひとつとなる、12.3インチのフル液晶TFTカラーメーターが表示される。この分野でも日本車は出遅れ感が否めなかったが、好き嫌いはあるだろうが、商品力アップにこのメーターが貢献しているのは間違いないだろう。
運転席から見える風景はトヨタブランド車ではなく、レクサスブランド車のような質感の高いものとなっている。さらに、座った瞬間にシートの出来がいいのに驚かされた。少々太めの筆者は、最近の多くのトヨタ車はサイドサポートがきつい(愛車である現行改良前カローラセダンもきつい)印象を受けるのだが、試乗車はきつい印象はない。座面もたっぷりしていてシートバック(背もたれ)では腰のあたりのフィット感がじつにいい。ファブリック+合皮やファブリックのシートでも同じ印象なのか確認したくなってしまった。
シフトをDレンジに入れて発進。アクセルを極端に踏み込まなければ、車内の静粛性はかなり高い。やや乱暴にアクセルを踏み込むと若干のメカニカルノイズが車内で目立ったので、欲を言えばもう少し何とかしてほしかった。
郊外の広い道路を走っていると、静かで走りも安定していることもあり。知らないうちにアクセルを踏み込み速度をどんどん上げているのに驚くことがあった。ベースとされるRAV4は、日本も含め世界的に大ヒットしているモデル。RAV4も運転してみると「世界で売れるのも納得」と思えるほど、素性の良さが運転していて伝わってくる。このRAV4をベースにラグジュアリームードを高めたクーペSUVとしてのハリアーがあるとすれば、トヨタらしいRAV4譲りの素性の良さを受け継ぎながら、性格分けがよくできているものと感じる。
個人的には、ハリアーぐらいの車格のモデルは、トヨタ車のなかでは価格と性能や質感のバランスが秀逸だなと常々感じている。調光パノラマルーフと有償色を選んでも車両価格は500万円を少し超えるぐらいとなり、誰でも手軽に買える価格ではないものの、試乗してみると、「これで500万円少し超えるぐらいなの?」と思える満足感を覚える人は少なくないはずで、それが人気につながっているものと考える。
今回ハリアーを試乗して、かつてのマークIIを思い出した。“ハイソカーブーム”などとも呼ばれた時代、そのブームをけん引していた4ドアハードトップでスーパーホワイトIIのマークIIグランデは、やはり当時誰もが気軽に買えるクルマではなかったが、爆発的に売れていた。筆者は当時は貧乏学生もしくは社会人になったばかりでもあり、人気絶頂だったころのマークIIを運転する機会には恵まれなかったが、今回ハリアーを試乗してなぜか“マークIIイズム”というものを感じた。
いまはマークIIクラスの正統派セダンは日本車ではほぼなくなっている。かつて、マークIIクラスのセダンに乗っていた人なども含め、幅広い層をひきよせる魅力を現行ハリアーは持っているようにも思えた。
レクサス車ほど、ずば抜けた高級感は追求していないものの、レクサス車よりは明らかに限られたコストのなかで(細かくコスト削減しているなと思えるところも見受けられるが……)、目いっぱい高級感も含めた高性能を追求している姿勢は、かつての日本車の真骨頂のひとつでもあり、とくにトヨタの得意技のひとつと考えている。このようなクルマ造りに対してDNAレベルというのは大げさかもしれないが、刺激を受ける人がまだまだ日本人には多く、現行ハリアーはデビューから一貫して人気車となっているのかもしれないと試乗して強く感じた。