音がしなければいいというわけではない
風切り音は、ドアミラーの形状や取り付け方の工夫で低減の道を探っている。窓枠と車体外板との段差を減らすなどにより、滑らかな車体表面になる造形でも抑えることができる。それは空気抵抗の低減にもつながるので、高速での燃費(電力消費率)向上に役立ち、一石二鳥だ。
フロントウインドウのガラスに遮音機能を設けたものもすでに上級車を中心に使われている。高級車になると、サイドウインドウへも遮音機能を設ける例がある。その場合でも、緊急車両の警報音と、それ以外の騒音との周波数を検証し、不都合のない開発が行われている。
まったく音のしない無響室のような環境は、人間が不快になることが知られており、静かということと音が何も聞こえないということとには違いがありそうだ。また、ある種の騒音は聞こえていても、人間がそれほど意識しない周波数や音質もあるはずだ。車内の静粛性を、単に静かという言葉だけで評価するのは的外れになる場合もある。
快適な室内という商品性を高めるため、自動車メーカーは静粛性に力を注ぐが、走行中に外界との関係を遮断するほどの静かさは、混合交通のなかで危険だ。そこを自動車メーカーも意識しているはずだ。
静粛性に優れるEVは、音楽を聴く場としてもエンジン車に比べ、よい条件であるだろう。エンジン車を含め、上級車種では名のあるオーディオメーカーの機器を取り付ける車種が増えている。ただし、良質な音であれば音量をそれほど大きくしなくても心地よい音楽を聴くことができるはずであるから、クルマで移動の際には、外界との関係を遮断し過ぎない音楽の聴き方にも配慮すべきだ。