シフトレバーそのものが消えつつある2020年代
いまでは少数派というよりは「絶滅危惧種」といってもいいコラムシフトだが、アメリカ車では少なくとも2000年代前半ぐらいまではコラムATがメインとなっていた。1999年までY30型日産セドリックワゴンが生産されていたが、コラムATにベンチシートを採用した仕様があり人気が高かった。2000年には北米専売車だった大型セダンとなるトヨタ・アバロンをプロナードとして国内発売したが、「3.0L」というグレードのみがコラムAT(ベンチシート)を採用していた。10代目ダットサンピックアップにもコラムAT仕様があり、これらは同じ車種でも中古車価格が高めに推移するなどしている。
また、クラウンやセドリック&グロリアの中古車を検索すると、いまでも特記事項として「ベンコラ(フロントベンチシートでコラムシフトということ)」なのかどうかが記されている。いまでもアメ車志向の強い人たちの間では「ベンコラ」は強い支持を受けているのである(状態次第だが中古車価格もベンコラ仕様のほうが高いこともある)。
かつて「コラムシフトはもっともイージーなシフト操作ができる」と言った人がいた。ステアリングコラムからレバーが出ているので、とくにATではステアリングを握りながら指先操作でシフト変更ができるというのである。
コラムシフトが大好きな筆者も、2000年ごろまではアメリカでレンタカーを借りるときには、「セダンで6人乗りを借りたい(つまりフロントベンチシートでコラムAT仕様ということ)」などといってコラムAT車ばかり乗っていた。確かに指先だけで操作できるのはイージーに感じた。日本車の場合は1970年代以降になると、ステアリングとコラムシフトレバーの間に、ワイパーレバーがレイアウトされるので、ステアリングとコラムシフトレバーとの間のリーチが長くなり使い勝手が悪くなってしまった。
ベンコラ車(セダン)の利点は助手席へのサイドウォークが容易なことや、センタートンネルあたりにカバンなどを置けるのが、とくにアメリカでは防犯面でも便利であった。日本ではスズキ・ワゴンRなどの軽自動車でも一時ベンコラ仕様が目立っていたが、これは体格の大きい(つまり太っている)筆者にとっては、運転席と助手席がわかれているセパレートシートよりは快適に座ることができた。アメリカでもベンコラ仕様が長く主流だったのは、このような理由があったのかもしれない。
コラムシフトかフロアシフトか、そしてMTかATかなども含めれば、時代ごとにさまざまな議論のあったシフトレバーだが、いよいよ電子制御は別としても、いままでのようなレバータイプのシフトコントロールが消えようとしている(アメリカ車でも最後までコラムシフトを採用していたアメリカンピックアップも、ダイヤル式などへ本格的に変わろうとしている)。「100年に一度の変革期」というのは、まさにこういうものなのだなと感じている。