運転技術向上が狙える冬がきた! レーシングドライバーがすすめる「雪道」走行と「ドラテク習得」のコツ (2/2ページ)

発進・減速のたびに電子制御の介入を意識することが大切

 ブレーキも同様。雪道やアイスバーンの低ミュー路ではブレーキが利き辛い。ブレーキペダルを強く踏み過ぎるとタイヤが滑ってロックし、ABS(アンチロックブレーキシステム)が作動する。制動時もこうした電子制御のアシストが利いて、多くのドライバーは何事もなかったかのように停止することができている。

 一般的にABSを解除するスイッチは付いていないので、ブレーキペダルの踏み加減で減速テクニックを磨くのは不可能と思われがち。だが、ABSは制動距離を短くするための装置ではない。ブレーキ減速中でもタイヤを転動させ、障害物を避けられるだけのグリップを残すのが本来の狙いだ。まっすぐな雪道でABSを作動させると減速Gはかえって小さくなるのが感じ取れるはずだ。そこで転舵を加えると若干でも操舵輪がレスポンスしてクルマの進行方向を変えてくれるはず。

 コーナリングの基本は直線部で減速させ、ステアリングを切り込んでコーナーのイン側にノーズを向けさせることが重要だ。そのためにABSは機能させられている。だが絶対スピードが早すぎたら、ABSがフルに介入してもステアリング操舵にクルマは反応しない。切り込んだ操舵輪と路面との間に発生する極小なグリップ力で旋回姿勢に持ち込むには十分な速度に落とす必要がある。直線区間でABSが介入しないレベルでブレーキペダルを操作し、減速を確実に行うのが重要なテクニックといえる。

 平坦路ならまだしも、下り勾配では尚更減速が難しい。エンジンブレーキを併用しながら、ブレーキでABSが作動介入しないように速度をコントロールする必要があるからだ。

 このように発進や制動時に、如何に電子制御を介入させないように、丁寧にアクセルやブレーキペダルを操作することで、乾燥舗装路での有効な加速や制動時にも活かせるドライビングテクニックの練習ができるというわけだ。雪国のドライバーなら誰でも経験的に学んでいるようなテクニック。まずは発進と停止を確実にマネージメントできるように雪道で練習できれば、ドライビングスキルは一段高められたといえる。

 ただ、こうした練習も多くのクルマが行き交う道路で意図して行うのは御法度だ。クローズドされた練習場で行うのが理想的だが、そうした場所はとくに冬季は少ないし費用もかかる。あくまで日常使用の発進、減速の度に電子制御の介入を意識して安全に運転するなかでマスターしていってもらいたい。


中谷明彦 NAKAYA AKIHIKO

レーシングドライバー/2024-2025日本カー・オブ・ザ・イヤー選考委員

中谷明彦
愛車
マツダCX-5 AWD
趣味
海外巡り
好きな有名人
クリント・イーストウッド、ニキ・ラウダ

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