軽量化と空力でライバルに挑んだ偉大なライトウエイトスポーツカー
では、そのエンジンで、いかにしてスポーツカーとしての醍醐味を味わわせるかにトヨタの真骨頂がある。それは軽量化と空力にあった。スポーツ800の車両重量は、わずか580kgであり、ホンダS800の755kgに比べ175kgも軽く仕上げられていた。これは、大人の体重を60kgと仮定したとして、3人分に近い重さに相当する。いまのクルマでも、ひとり乗りのときと3人乗りでは、加速感も違うし、燃費も違ってくる。
また、スポーツ800の流麗な外観は、コンセプトカーとして試作されたときには航空機のキャノピーのようなガラス張りの造形であったとされるほど、空気抵抗の少ない姿を追求していた。
軽量化と空力の追求により、スポーツ800の最高速度は時速155kmであり、ホンダS800の時速160kmと比べ、時速5kmの差でしかない。直線路を走った最高速度でのこの僅差は、サーキットでのレースや、山間の屈曲路での操縦性などにおいて、十分に勝負のできる性能といえるのではないか。
クルマの究極の目標は、軽量・小型といわれる。そこに、優れた動力性能があればなおよい。スポーツ800は、軽量・小型の原点を追求し、加えて空気抵抗の少ない流麗な姿によって、日本の誇るライトウエイトスポーツカーとして欠かせない1台といえる。
さらにスポーツ800はのちに、ガスタービンエンジンを使うハイブリッド車の試作にも活用されるなど、多彩な歴史も記している。