この記事をまとめると
■フォルクスワーゲンのEV「IDシリーズ」の日本導入第一弾となるID.4に試乗した
■ID.4は思っている以上にスタイリッシュでロングホイールベースの恩恵を受けて居住スペースが広い
■EVらしい尖った感じは皆無で、とにかくフォルクスワーゲンらしい走りだった
すでに50万台を販売したフォルクスワーゲンのEV「IDシリーズ」
フォルクスワーゲンのピュアEVシリーズ「ID」がだいぶ好調らしい。2020年の秋に最初のIDが顧客へ納車となってから、わずか2年という短い期間に50万台が販売されたのだ。そのうえ13万5000台ほどのバックオーダーを抱えてるという。これってすごいことじゃないか?
それはもちろんワールドワイドでのお話。IDシリーズは現在、コンパクトなハッチバックのID.3、SUVのID.4、クーペSUVのID.5、中国向け7シーターSUVのID.6、ワンボックスのID.Buzzといったモデルたちがラインアップされていて、数字はその総合力だ。そしてその中心となっているのが、ID.4である。以前から日本導入に期待がかかっていたが、ついに正式発表となり、試乗する機会に恵まれた。
初めて対面したID.4は、写真で見るより表情が豊かで、思っていたよりスタイリッシュな印象だった。とくに横から見たときのショルダーラインの流れ方、ウエストラインより下側のえぐり方、Aピラーからルーフを経由してCピラーへとつながるシルバーのアクセントなどによって、正統派SUVのシルエットに躍動感を持たせてるあたりは巧みだ。
昨今のフォルクスワーゲンは、イタフラ系のような華やかさや鮮やかさこそないものの、見る者の気持ちにストンと刺さるデザインを纏ってることが多いように感じてるのだが、このID.4も間違いなくその1台。スタイリングは見る人それぞれの感覚で判断すべきものだと考えてるから普段はあまり語らないのだけど、ID.4、個人的にはなかなか好印象だ。フォルクスワーゲンのなかでは、アルテオン・シューティングブレイクと並ぶくらいカッコいいと思う。
フォルクスワーゲンのEV用モジュラープラットフォーム、“MEB”の上に構築された車体のサイズは、全長4585mm、全幅1850mm、全高1640mm。ざっくりトヨタのRAV4とほぼ同じくらい、フォルクスワーゲンの中でいうならT-Rocよりほんの少し大きい程度、といったサイズ感だ。
が、そうした内燃機関を積むSUVたちと大きく異なるのは、ホイールベースの長さ。2770mmという数値は、そのまま室内の居住スペースの広さにつながっている。とくにリヤシートまわりは大きな恩恵を受けていて、脚を組むこともできるほど。室内全体が車体のサイズからしても広々として運転席まわりにもゆとりがあるように思えるのには、フォルクスワーゲンの空間作りの上手さも活かされてるからだろう。
たとえばシンプルで余計な造形のないクリーンなダッシュボードもそのひとつ。物理的なスイッチ類が少なく、さまざまな操作を中央のタッチスクリーンで行わねばならないのにはちょっとばかり慣れが必要かもしれないが、視界がスッキリしてるのは気分いいな、と思う。匂い立つような色気はどこにもないけれど、クオリティの高さとほどよく洗練された印象が感じられるあたりは、やっぱりフォルクスワーゲン、である。
日本に導入されるID.4は、基本2タイプ。バッテリー容量が77kWhで最大561kmの航続距離を持つモデルと、52kWhで388kmのモデルだ。77kWhのモデルには204馬力と310Nmのモーターが組み合わせられ、52kWhのモデルは170馬力と310Nmとなる。今回の試乗車はバッテリー容量の大きい方、ID.4“Pro”ローンチエディションだった。