まるで凶暴なじゃじゃ馬を乗りこなしているようだった
さらに、その挙動も特徴的である。アクティブセンターデフの省略とリヤにバッテリーを搭載していること、空力パーツが制限されたことから、多くのドライバーが昨年までのWRカーと比べるとアンダーステアを訴えていたが、確かにその挙動は基本的にアンダーステアで、それゆえに各チームのワークスドライバーは積極的にマシンを曲げており、結果として迫力あるパワースライドが生まれているように見える。
同時にピレリのコントロールタイヤは暖まりにくいうえに、秋を迎えた中部エリアの早朝はかなりの冷え込み。「オーガナイズの面で不満があるとすれば、タイヤウォームアップゾーンが短いこと。タイヤやブレーキも暖まらずにスタートするから本当に怖かった」と語るのは、セバスチャン・オジエ選手だが、このコンディションもタイヤのグリップ不足に影響し、迫力あるアクションを演出していたに違いない。
コースサイドで見ていると、まさに凶暴なじゃじゃ馬を乗りこなしているような雰囲気で、多くのファンがこのスリリングなファイトに興奮したことだろう。
しかも、舞台はワイディングや林道、住宅街など普段、我々が使用する生活道路。住宅地の間を走るSSは、まさにモナコGPやマカオGPなどの市街地レースを彷彿とさせる雰囲気で、古くからのラリーファンには感慨深いものがあったのではないだろうか?
まさにRally1車両はモンスターと呼ぶに相応しいマシンで、それを操るワークスドライバーはマジでリスペクトに値する存在と言える。2022年の大会を現地で見ることができなかった方は、2023年の大会で、ぜひ最新ワークスモデルの刹那的なスピードを体感してほしい。