この記事をまとめると
■高級車の運転は慣れていないと緊張してしまう
■ロールスロイスに試乗した経験からその感覚を解説
■存在感に慣れれば気難しさはないため、自信を持って運転すべきだ
存在感に慣れれば気難しさはない
15年ぐらい前のことになるだろうか。多くの人が世界一の高級車と認めるロールス・ロイス、そのなかでもエクスクルーシブな車種であるオープンボディのファントム・ドロップヘッドクーペに試乗した。
試乗会の拠点になっていたのは箱根の山の中のホテル。周囲は細い道ばかりだったうえに、5000万円以上という価格と巨大なボディ、贅沢な仕立てに圧倒されて、いつも以上にしずしずと走りはじめようとしたら、広報の人から「口開いていますよ」と指導を受けてしまった。
もちろんいつもはそんなことはない。並外れたラグジュアリーブランドのオープンモデルの運転で、我を忘れてしまったのだろう。
それもそのはず。当時のファントムが積んでいたのは6.75リッターのV型12気筒エンジンで、ボディサイズは全長5.5m以上、全幅約2mというボリューム。しかもあのロールスのオープンモデルということで、存在感は周囲の乗用車とは比較にならないレベルだったのだから。
とはいえオールアルミボディのおかげで車両重量は約2.7トンと、今のハイエンドEVと同等に収まっていたので、広い道に出ると水を得た魚とまではいかないものの、スムースかつスピーディにドライブすることができた。自分自身も次第にロールスと過ごすことに慣れてきたこともあって、むしろ運転しやすいことがわかってきた。
パワートレインは底力を感じさせつつレスポンスは穏やかで、乗り心地は極上。身のこなしは確実だけれど、唐突感は一切ない。おまけにロールスの場合、ヒップポイントが高めだし、無駄な抑揚のないボディは見切りがしやすい。なによりもエンジンフードの先端に立つフライングレディが、絶好の水先案内人になってくれる。
その点、同じ高級車でも背の低いスーパーカーではちょっと話が違ってくる。車種によってはエンジンのレスポンスが鋭かったり、トランスミッションのつながりがダイレクトだったりするうえに、低い位置に座っているので車両感覚が掴みにくいし、段差ではフロントのエアダムをぶつけそうで神経を遣う。
その点ロールスは、存在感に慣れれば気難しさはない。でなければ、こうしたクルマを買う富裕層から敬遠される恐れさえある。これはファントムのみならずベントレー、そしてトヨタ・センチュリーなど他のラグジュアリーセダンにも当てはまること。お金に余裕がある方は、自信を持って行っていただきたい。