走行距離税は物流への影響が大きすぎる
もし走行距離税が新設されるとして、それが上記で予想したように車検時に課税されるものだとすれば、自動車重量税からの置き換えとなるかもしれない。もっとも、そうしてガス抜きしつつ、実質的には増税するというのは政府・官僚の常套手段であり、一部のケースでは実質減税になるというシミュレーション的プロモーションをみて納得することがないようにしたいものだ。
ところで、走行距離税の問題といえるのは、流通を担うトラックやバンの税負担が大きくなってしまうことだ。物流への増税というのは、各種商品の小売価格上昇に直結する。インフレ対応が求められる現在において、小売価格が上がるような政策を推進するというのは考えづらい。
商用車については走行距離税を軽減するといった対応もあり得るだろう。現在でも乗用車より商用車のほうが自動車税などの税率は低くなっている。もし走行距離税が新設されるとしても、商用車と乗用車では単価なりを変えるべきといえる。
そうなると、一般ユーザーが商用車をパーソナルユースに使うというトレンドが生まれるかもしれない。たとえば、ダイハツ・アトレーはフルモデルチェンジによって5ナンバーの乗用車から4ナンバーの商用車となったが、4ナンバーは各種税率が低く、維持費を抑えることができるというユーザーメリットを実現するためだったりもする。
古くは、初代のスズキ・アルトはボンネットバンと呼ばれる商用車とすることで、車両本体価格のみならず維持費の安さでもアピールして大ヒットモデルとなった。はたして、税制変更によって、市場トレンドは変わってしまうのだろうか。
もちろん走行距離税には反対意見も多く、課題も山積みといえる。いずれにしても自動車ユーザーの負担は現状でも大きい。増税を検討するよりも減税をしてほしいと願うユーザーが多いはずだ。