ミズノから新発売のドライビングシューズが普段使いもイケて運転もラクで控えめに言って最高だった (3/3ページ)

ドライビングシューズ同士で徹底比較してみた

 さて、今回紹介している「ベアクラッチ」は真ん中の白いシューズ。今回の主役だ。紺色のシューズは大手スポーツメーカーが展開するドライビングシューズ。黒いハイカット状のシューズが、レースでも使用できるFIA公認の本物のレーシングシューズだ。この「ドライビングシューズ」を名乗る3アイテムがどう違うのか見ていきたい。ちなみに「ベアクラッチ」以外はすべて筆者の私物なので悪しからず。

 先ず形状だが、これはレーシングシューズを除いて大きく変わらない。レーシングシューズがハイカットなのは、機能面ももちろんだが、耐火性などを重視しているので、FIAのレギュレーションに従うとこのような形になるのが一般的。あとのふたつは一般的なスニーカーとほとんど変わらない。

 つま先のデザインも大きく変わらない。メーカーによって幅が違ったり素材が違ったりするが、これは価格や用途によるので今回はあまり関係ない。ただ、ミズノの「ベアクラッチ」に関しては日本人の足を徹底研究しているほか、一般人からスポーツ選手までの膨大な足に関するデータがあるので、日本人に多く見られる幅の広い足に最適化された靴の幅になっているのが大きな特徴だ。紺色のシューズは大手海外メーカーの物だが、確かにかなりタイトな印象がある。もちろん履けるし、足も痛くならないのだが、窮屈なことに変わりない。レーシングシューズはタイトである方がいいのでこれはこういった物として扱う。

 踵はどのシューズも踵全体をサポートする形状となっている。これはドライビングシューズを名乗るシューズ最大の特徴で、フロアに置いた足がしっかり固定され、滑らないようになっている。もちろん踏みつけている側にある部分なので剛性もある。ここは筆者的にはどれもそんなに印象は変わらない。

 続いて、歩いたり踏んだりと、各種動作をする上で1番大事なところであるソールまわり。ここがミズノ「ベアクラッチ」最大の武器だ。表は一般的なラバーソールだが、インソールは何度も文中で登場しているマツダとコラボしたドライビングシューズに採用されている「ミズノコブ」と言われる独自開発の専用インソールが採用されており、ここに関しては4万円ほどしたシューズとまったく同じ物が採用されているとのこと。

 これにより、極めて良好なペダルフィーリングを実現しつつ、歩く際も最適なクッション製を維持しており、ウォーキングも容易にできるようになっている。なので、普段履きの靴として歩きつつ、ドライビングシューズにもなってしまうというワガママを叶えた仕組みとなっている。ミズノの技術の結晶だ。ちなみに、このシューズを履いて本社がある大阪から新幹線でこちらの会場に来たというスタッフが実際にいたらしいが、履き心地は一般的なスニーカーよりいいくらいだったとか(写真はシューズの内部)。それでいて、中敷は今回「素足感覚」を生かすために設定されていないのもポイント。「ミズノコブ」を装備した中敷き(インソール)は今回「素足感覚」を生かすために設定されていないのもポイント。ミズノコブを装備した「ミッドソール」の上に生地が貼ってあるだけということになる。可能な限り足裏からペダルの感覚がわかるよう、薄さにもこだわっているのだ。

 では、紺色のドライビングシューズだがこれはたしかに運転する際は非常にフィーリングがいい。実際に長距離ドライブをする際によく利用する。しかし、ドライビングシューズというだけにソールがかなり薄い。もちろん歩けるが、これを履いて街を散策したりするのは結構苦痛なのだ。なので、履き替えすることが多く、結果として面倒になるだけでなく、荷物も増える。なかなか普段履きとして使用するには覚悟がいる。耐久性的な意味も含めてなら尚更だ。

 レーシングシューズに関してはペダルのフィーリングが第一なので歩き心地なんていう概念は皆無。1時間から2時間ほど立っているだけで足の裏が痛くなってくるほどなので、これで町中を歩くのなんて論外。歩くことは考えられていないので耐久性も全然ない。レーシングシューズは酷使するとよく足のソールが剥がれてくることからも、その耐久性はおわかりいただけるだろう。実際、レーシングギアを扱う店に行くとピットを歩く用の靴なんてのも売ってるほど。もし、これを普段から履いている方がいたらかなりの猛者。まわりが認めなくても私が認める。

 簡単な比較だが、以上のような違いがある。価格は、紺のドライビングシューズがおおよそ1万5000円(定価)ほど、レーシングシューズは安価な物なので2万5000円(定価)ほど。でもって、今回試着した「ベアクラッチ」は先ほど述べたようにおおよそ1万2100円(公式通販価格)だ。

 それぞれのシューズに用途があるのはもちろんだが、「普段履きで使えるドライビングシューズが欲しい!」なんていうクルマ好きあるあるの視点からすれば、どれが一番オススメかは火を見るより明らかだろう。今回紹介するこの「ベアクラッチ」はコスパ最強な1足と言っても差し支えない。

 一方で、褒めてばかりではリポートではないと思っているので、ダメなところを挙げてみたいと思ったのだが、正直に言うとこれと言って見当たらない完成度。デザインや色に関しては個人の好みなどがあるので触れないが、個人的にはどんな服装でも合うこのくらいのデザインのほうがいいと考える。仮に、側面にデカデカとランバード(ミズノのロゴ)が入っていたらスパイクのようだし、蛍光色を使ったド派手な色ではなかなか普段の服装に合わせづらいだろう。後述するが、強いて言うなれば女性向けにもう少し小さい側のサイズ展開があったほうが良いかなと感じた。と、言うのも女性はサンダルやヒールなどと、運転時のシューズを分ける人が多いので、そういったユーザーにもこの製品を体感してもらえたら、普段のドライブをもっと楽しく感じられるようになるのではないかと思う。

 ミズノは最近、製造業や運搬業などなど、スポーツとは関係ない仕事の分野での製品展開、いわゆるワークビジネスに力を入れているというが、そのビジネススタイルの一環として考えるのであれば、今回の「ベアクラッチ」はタクシードライバーやトラックドライバー、バス運転手といった仕事でクルマを運転するユーザーには文句なしでオススメしたいシューズであることのほか、クルマ好きな老若男女にもすすめられる一足に仕上がっていると、今回の試着で実感した。何より、あのミズノが関わっていながらも価格が非常に安い。一般的なドライビングシューズはこのシューズの倍ほどの価格で売っているのもザラだからだ。それでいて、それら製品の歩き心地が良いかといえば難しいところ。

 製品の展開だが、「ベアクラッチ」のカラーは「黒」「ネイビー」「ホワイト」となっており、普段の私服でもフォーマルな場でも問題ないカラーとデザインとなっている。サイズは24.5cmから28cmまで、0.5cm刻みで設定されており、販売はすでにスタートしている。1年で6000足ほど売りたいというのがミズノの目標だ。

 最後に、ミズノはシューズのほかに「ドライビングソックス」と「ドライビングサポーター」も今回同時にリリースしてる。このベアクラッチと一緒に使うのはもちろん、単体でも足の動きをミズノの技術でサポートしてくれる。また、リーズナブルということもあるのでお試しで使ってみるのもオススメだ。

 日本を代表する大手スポーツ用品メーカーであるミズノが、ドライビングシューズというあまりにもニッチな世界に足を踏み入れたことは、クルマ業界に携わる人間として敬意を表したい。靴1足と思うかもしれないが、クルマ好きのみならず、運転に自信がない人も是非このドライビングシューズを、ちょっとした自分への投資として履いてみてはいかがだろうか。きっと普段のドライブがより一層楽しくなるだろう。


WEB CARTOP 井上悠大 INOUE YUTAI

編集者

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