もはや間違い探しレベル! フルモデルチェンジしたのに新旧そっくりデザインを採用するクルマの謎 (2/2ページ)

ソックリでもまったく異なる結果を招くことも!

ソックリでも新しさを感じるデザインの力

 ただし、ほとんど「そのまま」のモデルチェンジをしても、それがユーザーに受け入れられるか、販売的に成功するかはまさにデザイン次第。先述の3台はそれが巧くできていたようです。たとえば、ムーヴキャンバスは先代に対してよりプレーンなボディを目指しており、フロントのボリューム感やサイド面の張り、リヤパネルのシンプルさなどが見事です。

 N-BOXは、先代の道具感を感じるボディを「乗用車的にする」意図が的確で、ドアパネルやホイールアーチなどを滑らかな面構成とし、よりクルマらしさを打ち出しています。また、500eではアップデートした「大人っぽさ」が特徴で、豊かになったフェンダーや立体的なリヤパネルでそれを果たしています。

 この3台のいずれもが、先代の特徴を継承しつつも、明快なデザイン意図によって「新しさ」を感じさることに成功しているのです。

ソックリでもヒットになるとは限らない

 一方、同じように新旧ソックリのモデルチェンジをしても、いわゆるヒット作に結びつかない例もあります。

 ホンダの「N-ONE」は、プラットホームこそ更新したものの、何とボディパネルの多くを流用するという異例のモデルチェンジでした。担当したデザイナーの言葉では「先代以上の表現は見つからなかった」ということですが、ソックリを通り越して「まったく同じ」となると、やはり多くの支持を得るのは難しいようです。

 スズキの3代目「スイフト」も会心のヒットにならなかった例です。市場となる欧州のスタジオで作り込まれた2代目は、日本車離れした凝縮感を持つ意欲作でした。ところが、ソックリでありながらも、変にスタイリッシュさを盛り込んだ3代目は肝心の凝縮感を失い、どこか間延びしたイメージを背負ってしまいました。

 冒頭にも書いたとおり、新旧ソックリのモデルチェンジは、好評だった先代のイメージをできる限り残し、ヒットを継続したいというメーカーの思惑があります。しかし、どんなに似ていても、そこにデザイナーの明快なテーマがなければ、まったく異なる結果を招いてしまうのです。それこそがカーデザインの奥深さと言えるのかもしれません。


すぎもと たかよし SUGIMOTO TAKAYOSHI

サラリーマン自動車ライター

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いすゞFFジェミニ4ドア・イルムシャー(1986年式)
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オヤジバンド(ドラムやってます)/音楽鑑賞(ジャズ・フュージョンなど) /カフェ巡り/ドライブ
好きな有名人
筒井康隆 /三谷幸喜/永六輔/渡辺貞夫/矢野顕子/上原ひろみ

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