いまこそ日本もライドシェアを解禁すべきときだ
国土交通省は2022年8月にいままで軽貨物運送事業で使用できる車両が軽貨物車(黒ナンバー車)に限られている運用を、軽乗用車の使用を可能とする検討に着手し、結論が得られ次第、速やかに必要な措置を講ずるということを発表した。つまり、今後は軽乗用車でも配送業務に使えるようになるのである。この動きについて前出事情通は「この動きは、きたるべきライドシェアサービスの日本解禁を見据えての動きとの話も聞いています」と説明してくれた。
欧米や中国、ASEAN諸国など世界では、一般ドライバーが自分のマイカーなどを使い、アプリを活用してタクシーのような送迎サービスを行っているのが当たり前となっている。日本国内では、現状諸外国のようなライドシェアサービスは白タク行為として原則禁止されている。しかし、前述しているように、全国各地でタクシーを呼ぼうとしても、物理的理由で断られるケースが顕在化しており、しかも早期に改善する方策が見当たらないのが現状となっている。そこでライドシェアサービスの日本国内での導入がにわかに現実味を帯びてきたのである。
よくいわれるのが、ライドシェアサービス導入はタクシー業界への圧迫につながるとしている。しかし、ライドシェアの盛んなアメリカやインドネシア、タイなど、筆者が見てきた範囲ではタクシーと共存しているように見える。地域によってはタクシー乗務員がタクシー車両にてライドシェアドライバーも兼ねているケースもあるし、日本でも東京都内など、地域によっては大手ライドシェアアプリとタクシー事業者が提携し、タクシーをライドシェアアプリで呼ぶことも可能となっている。
また、近距離はライドシェアで、一定距離を乗るときはタクシーでと使い分けしているといったことを聞いた地域(海外)もある。ライドシェアはキャッシュレス決済が大原則(なぜか現金決済を要求していたインドでも最近はキャッシュレス決済が可能となったそうだ)。ライドシェア導入による不安にはドライバーの資質という面もあるが、これは乗車後にスマホにドライバーなどサービスへのスコアリングを求めるメッセージがくるシステムになっており、ドライバーはこのスコアをかなり意識しているので、インドなどでは導入以前のタクシーに比べると飛躍的にサービスレベルは向上している。
ただ気になるのは、ドライバーがタクシーだけでなくライドシェアへも分散してしまうので、とくにタクシードライバーのレベル低下が目立っていると筆者は考えている。バンコクやジャカルタでタクシーに乗ったときに、行き先がわからず、結果的に筆者のスマホでグーグルマップにて検索し、経路探索してスマホを渡して欲しいと乗務員から言われることがあった。
会社に電話して聞くなど、以前は自力で行き先を探していたのに、最近はあっさりと筆者にルート検索させるケースが目立っている(当たり前だが日本語なのでわからないと文句を言われることもあった)。
日本に話を戻せば、呼びたいときにタクシーが呼べないことが常態化しつつあるのは大きな問題である。確かに状況はライドシェア解禁まったなしともいっていいだろう。ただ、実際に日本で解禁するには、カーシェアリングがレンタカー事業として分類されるように、前例主義に従うので、タクシー事業の新たな形態に分類されるだろうし、日本独特の「スマホを持っていないと利用できないのはいかがなものか」といった議論なども出てくるだろう。
コロナ前にオーバーツーリズムと言われるぐらい、インバウンド(訪日外国人観光客)が日本を訪れていたころには、同胞ビジネスと思われる”闇ライドシェア”のようなものを行っているような現場を見たこともある。岸田政権はインバウンド需要5兆円で国内経済の浮揚をはかるとしているが、このままではタクシーサービスだけを見ても、満足に提供できる環境が整っておらず、外国人観光客を迎え入れる準備などができていないのは日本のおもてなし文化に反するのではないかと考える。
また、それによって“闇ライドシェア”の暗躍も助長しかねない。いまこそスピードを速めながらライドシェア解禁を真剣に議論すべきであると筆者は考えている。